がんの初期治療終了後のフォローアップ戦略

本レビューの目的

本コクランレビューでは、がんの治療を終えた患者(がんサバイバー)が3種類の異なるフォローアップ(治療後の経過観察)を受けた場合の医療的な結果と患者の主観に基づく結果の改善を検証した。関連するあらゆる研究を収集、精査したところ、53件が該当した。

要点

総合診療医または看護師など、非専門医によるフォローアップは、専門医によるフォローアップと比較して、健康関連のQOL(生活の質)、不安感、うつについて、ほとんど、またはまったく差を生じない。フォローアップの違いによる全生存期間および治療後のがん再発の発見に対する影響は明らかではなかった。

診察や検査の回数が少ないなど低頻度のフォローアップは、全生存期間についてほとんどまたはまったく影響しない可能性があるが、頻度の高いフォローアップと比較すれば、おそらく再発の発見が遅れると思われる。ただし、再発の早期発見が生存に与える影響に関して確証を得るには、ほかの種類の研究が必要である。さらに、健康関連QOL(生活の質)、不安感およびうつに対する影響についても確証を得られなかった。

症状に関する患者教育、経過観察あるいはサバイバーシップケアプラン(がんサバイバーのための診療計画。包括的な治療ガイドラインと経過観察に関する推奨事項で構成されており、患者とその主治医で共有できる)など、再発の検出に関連する追加的要素を加えた3つ目のフォローアップ戦略については、ほとんどエビデンスがなかった。

本レビューで検討された内容

がん治療を受けた後、ほとんどの患者が再発の徴候がないかを調べるためにフォローアップを受ける。再発の場合、早い段階で治療することによって患者の生存期間が長くなることが期待されるため、早期に再発を検出したほうがよいと考えられている。病院で定期的にがん専門医の診察と検査を受けるという従来のフォローアップは費用がかさみ、患者の負担になる可能性がある。そこで、専門医ではない医療従事者が従来とは異なる頻度で検査を行う、あるいはサバイバーシップケアプランを追加するといった新たなフォローアップ戦略が開発され、試行されてきたが、その有効性は明確になっていない。

本レビューの目的は、3種類のアフターケアが生存期間の延長、再発の早期発見、そして費用の軽減だけでなく、患者アウトカム(健康関連QOL [生活の質]、不安感、うつなど)の改善に影響を与えるかどうかを明らかにすることであった。アフターケアの種類は、1)非専門医が主導(総合診療医主導、看護師主導、患者側からの受診または非専門医と専門医の分担ケア等)に対して専門医が主導するフォローアップ、2)低頻度のフォローアップに対して、頻度を高めたフォローアップ(受診、検査、あるいは診断処置の頻度や精密度に基づく)、そして3)再発の検出に関連する追加的ケア要素(症状に関する患者教育、モニタリング、またはサバイバーシップケアプラン等)を取り入れたケアに対して、通常のケアによるフォローアップであった。

本レビューの主な結果

主に欧州、北米およびオーストラリアの15カ国で、12種類のがん経験者2万832人が参加した53件の研究を対象に解析を行った。全件が病院または診療所で実施されていた。

がんサバイバーが、総合診療医や看護師のような非専門医によるアフターケアを受けている場合

- 全生存期間やがん再発の早期発見への影響についての確証は得られなかった。

- 12カ月目のフォローアップ時点で、健康関連QOLと不安感に関してはおそらく、ほとんどまたはまったく差がなく、うつに関してはまったく差がないと思われる。

- 2種類のフォローアップ戦略の間に、費用の差があるという確証は得られなかった。.

がんサバイバーが、頻度の少ない診察や検査など、低頻度のアフターケアを受けた場合

- 全生存期間にはほとんど、あるいはまったく差がないと思われるが、再発の発見は遅れる可能性が高い。

- 健康関連QOL、不安感および費用面で差があるという確証は得られなかった。うつについて評価した研究はみつからなかった。

がんサバイバーが、症状に関する追加的教育やサバイバーシップケアプランを含んだアフターケアを受けた場合

- この種類のアフターケアが健康関連QOL、不安感、またはうつをどのように改善するのか、また医療費を上げるかどうかの確証は得られなかった。全生存期間および再発の早期発見を評価した研究はみつからなかった。

本レビューはどれくらい最新のものなのか

2018年12月11日までに発表された研究を検索した。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)片瀬 ケイ 翻訳、野長瀬 祥兼(市立岸和田市民病院腫瘍内科)監訳 [2020.1.27] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012425.pub2》

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