ダンスムーブメント療法は認知症に有効な介入法か?エビデンスのレビュー

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このレビューの重要性は?

現在、世界中で約3560万人が認知症に罹患しており、高齢化が進むに従って罹患数は著しく増加すると予測される。認知症に関する文献では、症状の複雑性に対処し、患者に総合的な働きかけを行う必要があると論じられている。ダンスムーブメント療法は動作やダンスを用いて感情を表現し探索する体系化された心理的介入であり、認知症患者に有用な可能性がある。しかし、その有効性は依然として不明である。本稿は認知症に対するダンスムーブメント療法の有効性に関する初のレビューであり、認知症に対して利用可能な非薬物療法に関する新たなエビデンスとなる。

このレビューは誰の参考になるか?

本レビューは、認知症患者およびその看護者ならびに一般開業医、精神衛生の専門家、心理療法士の参考になると推測される。

このレビューでわかることは?

次の疑問点を挙げた。ダンスムーブメント療法は無治療または標準治療と比較して有効か?ダンスムーブメント療法は他の治療法と比較して有効か?ダンスムーブメント療法の種類による効果の違いは?

このレビューで対象となる研究は?

認知症に対するダンスムーブメント療法について、既報および未発表のすべてのランダム化比較試験を2016年3月までデータベースから検索した。年齢、性別および民族による制限は設けなかった。選択基準を満たす試験はなかった。

このレビューのエビデンスからわかることは?

ダンスムーブメント療法が認知症に有効な介入法であることを示すエビデンスは得られなかった。

今後の展望は?

ダンスムーブメント療法が認知症に対して有効かどうかを明らかにするには、適切にデザインされた参加者数の多い試験および適切に定義された介入法が必要である。

著者の結論: 

ダンスムーブメント療法が認知症に有効かどうかを評価するには、方法論の質が高く、サンプルサイズが大きく、介入の構成および実施方法が明確な試験が必要である。

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背景: 

認知症はさまざまな脳変性疾患の総称で、国際アルツハイマー病協会によると、世界で約3560万人が罹患している。最新の国立医療技術評価機構(NICE)の認知症ガイドラインでは、認知症のさまざまな病期および症状に対し、非薬物療法をはじめ、多様な治療選択肢の有用性が注目されている。関連文献でも、本症の複雑性を考慮し、患者の身体面、感情面、社会面および認知機能に総合的に対処した介入の有用性が議論されている。同時に、芸術の効果に注目し、本症の複雑性に対処するための実践例を示した文献の数が増加している。ダンスムーブメント療法は本症の複雑性に対応し得る体系化された心理療法で、認知症患者に有用な可能性があるが、その有効性は依然として不明である。

目的: 

認知症患者における行動、社会、認知および感情に関連した症状に対するダンスムーブメント療法の効果を無治療、標準治療または他の治療と比較評価すること。また、ダンスムーブメント療法の種類(Laban式ダンスムーブメント療法、Chacianダンスムーブメント療法、オーセンティックムーブメントなど)を比較すること。

検索戦略: 

ALOIS、CENTRALを網羅するCochrane Dementia and Cognitive Improvement’s Specialized Register、主要な医療データベース、試験レジストリおよび灰色文献を2016年3月まで検索した。関連試験およびレビューの参考文献一覧を確認し、世界中の専門機関、教育プログラムおよび専門家に問合せを行った。

選択基準: 

あらゆる言語のランダム化比較試験(RCT)を検討し、クロスオーバーデザインおよびクラスターRCTも対象とした。検討する試験の対象は認知症患者で、年齢および背景は限定せず、ダンスムーブメント療法の専門家が介入を行うものとした。介入者は(i)正式な訓練を受け、(ii)訓練中のダンスムーブメントセラピストであるか、または(iii)試験実施国においてダンスムーブメントセラピストの認定を受けている者とした。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ研究のアブストラクトまたはタイトルを評価し、全文を読んだ後にそれぞれ方法論の質を評価した。

主な結果: 

電子検索および問合せによって同定した102件の試験から重複を除いた後、80件のタイトルまたはアブストラクトをスクリーニングした。次に19件の論文の全文を評価したが、いずれも選択基準を満たしていなかった。3件の研究では介入法としてダンスムーブメント療法に言及していたが、介入者がダンスムーブメント療法の有資格者ではなかったため、これらの研究を除外した。結果として、本レビューの対象となる試験は存在しなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
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