皮膚軟部組織感染の患者に対し、漢方薬を使用すべきか?

皮膚軟部組織感染とはなにか?
皮膚軟部組織感染(SSTI)は、皮膚やその下の組織によく見られる感染である。SSTIには、膿痂疹、膿瘍形成、蜂巣炎、丹毒、壊死性(皮膚が死んでしまう)皮膚感染、動物あるいはヒトの咬傷や動物との接触による感染、術後感染がある。

SSTIのほとんどは治療を必要とせず、自然治癒する。SSTIの中には、より重篤で生命を脅かす感染があり、これらには治療が必要である。

漢方薬とは何か?
漢方薬は、大部分が植物からの抽出物または植物の一部であり、薬剤として単独または併用して用いられる。これらの伝統的な薬剤は、何世紀にもわたって中国で用いられており、中国の医師は現在でもSSTI治療に漢方薬を処方している。

なぜSSTIに漢方薬を使用するのか?
通常医療では、SSTI治療に抗菌薬を用いるが、抗菌薬は高価で、有益である一方害をもたらす(副作用)可能性もある。また、すべての人に適切とは限らず、細菌が抗菌薬に耐性を持つと効果がなくなってくる。別の治療法を見出す必要があり、漢方薬はその代替となる可能性を有している。

このレビューの目的
本レビューの目的は、漢方薬がSSTIに対する有効な治療であるか否か、医学的研究から示すことであった。漢方薬の使用と他の治療法または偽治療プラセボ)のどちらが患者により良い結果をもたらすかを示すため、「ランダム化比較試験(RCT)」と呼ばれる特殊なデザインの医学的研究で両者を比較する必要があった。

レビューの知見
SSTI治療を目的とした漢方薬の使用と、他の治療法またはプラセボとを比較したRCTは見つからなかった。 したがって、SSTI治療を目的とした漢方薬の使用を支持することも否定することもできない。

SSTI治療における現在の標準診療と比較した漢方薬の有効性および副作用を評価するRCTが、今後実施されることを期待する。これらの試験は、医師や人々が最善のSSTI治療法を決定するうえで役立つであろう。

著者の結論: 

現在のところ、RCTからはSSTI患者の治療における漢方薬の使用を支持する、あるいは反証となる情報は入手不能である。

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背景: 

皮膚軟部組織感染(SSTI)は、表皮、真皮、あるいは皮下組織によくみられる感染である。SSTIには、無処置で自然治癒する軽度の表在性感染から、深部にまで達する、進行性、壊疽性の生命を脅かす感染まである。一部の分類方法では、臨床上の重症度から、SSTIを「複雑性」感染と「単純性」感染に分類する場合がある。SSTIの治療は、抗菌薬による治療、外科的壊死組織切除またはドレナージ、および必要な場合は蘇生を行う。これらの治療は、高額な治療費や抗菌薬に対する細菌耐性、および副作用を理由に制限される場合がある。したがって、SSTI患者の多くは本疾患治療のため漢方薬を使用するようになってきている。

漢方薬は、何世紀にもわたり中国で利用されてきた天然の物質であり、中国では一般にSSTIに有効であると考えられている。 一部には副作用報告があるものもあるが、抗菌作用や抗炎症作用を持つことが示されている漢方薬がある。そのため、SSTIに対する漢方薬使用について診療現場への情報提供と今後の研究に指針を示す目的で、現在の臨床的エビデンスを体系的にレビューする必要がある。

目的: 

皮膚軟部組織感染(SSTI)治療に対する漢方薬の有効性および有害性を評価すること。

検索方法: 

検索には、出版日、言語、あるいは文献の発表・未発表に制限を設けなかった。2014年7月に、以下の電子データベースを検索した。Cochrane Wounds Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ)、Ovid MEDLINE、Ovid MEDLINE(In-Process & Other Non-Indexed Citations)、Ovid EMBASE、Ovid AMED(Allied and Complementary Medicine)、およびEBSCO CINAHL。

選択基準: 

SSTI患者を対象に、漢方薬と他の介入またはコントロールとを比較したランダム化比較試験(RCT)すべて。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が独立して、論文検索結果を審査した。見解の不一致はなかった。

主な結果: 

選択基準に合致するRCTは同定されなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.10]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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