味覚障害を管理するための介入

本レビューの目的

本コクラン・レビューの目的は、小児および成人における亜鉛欠乏性/特発性(原因不明)味覚障害および慢性腎不全に続発する味覚障害を管理するための最善の方法をみつけることである。

要点

亜鉛サプリメントや鍼治療は、味覚障害の治療にある程度有効であると考えられる。しかし、味覚障害の治療における亜鉛サプリメントおよび鍼治療の役割を確認する上で、より質の高い試験が必要である。

このレビューからわかったこと

味覚は、個人の健康上および精神上の健全性にとって重要である。味覚障害は、味覚の欠如から、味覚のひずみ、味覚能力低下まで、さまざまである。味覚になんらかの障害が起こると、栄養不足や有毒な食品物質摂取などの状況に陥る可能性がある。味覚障害の原因は、疾患、薬剤、放射線治療や加齢などが考えられるが、原因不明で起こることもある。

さまざまな治療法が、味覚を改善するために使用されてきた。これらには、亜鉛物質、ピロカルピン、αリポ酸、経頭蓋磁気刺激、イチョウ、鍼治療などが含まれる。

レビューの主な結果

この問題に対処するために関連するすべての試験を収集および分析し、異なる治療検証した10試験合計581例を特定した。9試験では亜鉛物質の有効性を評価し、1試験では鍼治療の効果を評価した。本レビューでは、特発性または亜鉛欠乏性や慢性腎不全による味覚障害に関する試験のみを組み入れた。

2試験はドイツ、3試験は日本、2試験は英国、3試験は米国で実施された。これらの試験では、味覚障害の患者を対象に、亜鉛とプラセボ、または鍼治療と偽治療を比較した。2試験は政府により、3試験は個人企業により、2試験は製薬会社により資金提供を受けており、3試験については資金に関する詳細は記載されていなかった。

味覚障害の患者に亜鉛を投与した場合、プラセボと比較して:

エビデンスの質が非常に低いため、患者自身が報告する味覚の鋭敏さの改善度について亜鉛サプリメントの役割を結論付けるには不十分であり、亜鉛欠乏性/特発性味覚障害の患者において亜鉛サプリメントによって味覚能力が改善するというエビデンスの質は非常に低かった。
亜鉛補充に伴い、皮膚炎、悪心、腹痛、下痢、便秘、血中鉄分低下、血中アルカリフォスファターゼ増加、血中トリグリセリド軽度増加などの有害事象が認められた。
味の識別や生活の質に改善がみられたことを示す試験はなかった。

味覚障害の患者に鍼治療を施行した場合、偽治療と比較して:

エビデンスの質が非常に低いため、特発性味覚障害(味覚のゆがみ)および味覚低下(味覚能力の低下)の症例において味覚判断を改善するための鍼治療の役割を結論付けられない。
鍼治療に関する試験では、有害事象は認められなかった。
味覚能力や生活の質に改善がみられた試験はなかった。

いずれの試験も亜鉛サプリメントと鍼治療を比較していなかったため、亜鉛サプリメントまたは鍼治療の優位性について結論付けることはできなかった。

本レビューの更新状況

2017年7月4日までに公表された試験を検索した。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD010470.pub3】

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