年齢6カ月から5歳の小児における罹病率および死亡率を低下させるためのビタミンA補充

背景

ビタミンA欠乏症(VAD)は重大な公衆衛生問題であり、低・中所得国では5歳未満の小児1億9千万人が罹患している。VADにより小児の呼吸器疾患、下痢、麻疹、視力障害などさまざまなリスクが増加しやすくなり、死に至ることもある。過去の研究では、VADのリスクがある6カ月~5歳未満の小児に合成ビタミンAを補充すると、死亡や複数の疾患のリスクが低下する可能性が示されている。

レビューの論点

本レビューでは、6カ月~5歳未満の小児の疾病や死亡の予防において、合成ビタミンAの補充(VAS)の効果プラセボ(偽薬)や非介入と比較して評価することを目的とした。

レビューの方法

発表済み、および未発表の研究結果を対象としたさまざまなデータベースを検索した。ランダム化比較試験(RCT:参加者を1つ以上の治療群にランダムに割り付ける研究)のみを選択した。研究文献では、RCTが最善の実験的研究方法と考えられている。結果を数学的に統合し、疾病や死亡に対するVASの有効性について全般的な推定値を算出した。文献検索は2016年3月現在のものである。

試験の特性

本レビューでは小児1,223,856名を対象とした47件のRCTを選択した。研究は19カ国で実施された:アジア30件(63%、インド16件を含む)、アフリカ8件(17%)、中南米7件(15%)、オーストラリア2件(4%)。小児の平均年齢は約33カ月であった。大半の研究は男児と女児が同数で、期間は約1年であった。選択した研究の質はさまざまであったが、死亡率については、研究の実施において起こりうる誤の影響を受ける可能性は低いと考えられた。

主な結果

死亡の予防に対するVASの効果については、選択した研究のうち19件のデータが利用でき、これらを統合した結果により、ビタミンAは全般的な死亡リスクや下痢による死亡を12%低下させることが示唆されている。ビタミンAにより麻疹、呼吸器感染症、髄膜炎による死亡が減ることはないが、下痢や麻疹の新たな発症が減る可能性はある。VADのリスクがある小児に対する合成ビタミンAの経口補充は、夜盲症のリスクを低下させる。また、ビタミンAの血中濃度も改善する。副作用に関する報告は、世界保健機関の推奨で高用量とされるビタミンAを摂取後48時間以内に生じる嘔吐のリスクのみであった。

エビデンスの質

GRADE法を用いてエビデンスの全般的な質を評価し、研究の方法論的欠陥、選択した研究における結果報告の一貫性、結果を他の環境にどの程度適用できるか、および治療の有効性について検討した。これらの基準に基づき、全体的な死亡リスクや下痢による死亡に対するVASの利益について、エビデンスの全般的な質は高いと判断した。他のアウトカムについては、エビデンスの質を低い、または中等度と評価した。約100万人の小児を対象に最近実施された1件の大規模研究では、VASのいかなる効果も示されなかったが、この研究と適切に実施された他の研究を統合すると、VASには死亡や疾病の予防に有益な効果がみられた。要約すると、VADのリスクがある6~59カ月の小児に対するVASは、疾病や死亡のリスクを低下させる可能性がある。

著者の結論: 

ビタミンAの補充により、小児の罹病率や死亡率において臨床的に重要な低下がみられる。そのため、VADのリスクがある5歳未満の小児に対し、あらゆる補充に関する政策の継続を勧める。6カ月~5歳未満の小児を対象にVASに関するプラセボ対照試験を今後実施しても、本レビューの結論は変わらないと考えられるが、異なる用量や送達機序を比較する研究は必要である。ビタミンA欠乏症の確定症例を対象としたプラセボ対照試験の実施は、非倫理的であると考えられる。

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背景: 

ビタミンA欠乏症(VAD)は重大な公衆衛生問題であり、低・中所得国では5歳未満の小児1億9千万人が罹患し、死亡を含め、健康への悪影響が多い。過去のエビデンスや本レビューの旧版に基づき、世界保健機関では6~59カ月の小児に対するビタミンA補充の推奨を継続している。本レビューの旧版が2010年に公開されているが、今回の更新では近年発表された新たなランダム化試験のデータを含め、エビデンスをレビューした。

目的: 

6カ月~5歳未満の小児の罹病や死亡を予防するためのビタミンA補充(VAS)の効果を評価すること。

検索方法: 

CENTRAL、Ovid MEDLINE、Embase、その他6つのデータベース、および2つの試験登録を2016年3月に検索した。また、参考文献リストを調べ、追加された研究を同定するために関連性のある団体や研究者に連絡を取った。

選択基準: 

地域の医療機関において6カ月~5歳未満の小児を対象に、合成ビタミンAの補充による効果を評価したランダム化比較試験(RCT)およびクラスターRCT。入院中の小児、および疾患や感染のみられる小児を組み入れた研究は除外した。また、栄養強化食品、ビタミンA強化食品、およびβカロテン補充の影響について評価した研究も除外した。

データ収集と分析: 

今回の更新では2名のレビューアがそれぞれ選択する研究を評価し、データを要約し、協議により相違を解消した。全死因死亡率、死因別死亡率、疾患、視力、副作用についてメタアナリシスを実施した。GRADE法を用いてエビデンスの質を評価した。

主な結果: 

小児1,223,856名を対象とした47件の研究を同定し、このうち4件が新規の研究であった。研究は19カ国で実施された:アジア30件(63%、インド16件を含む)、アフリカ8件(17%)、中南米7件(15%)、オーストラリア2件(4%)。約1/3の研究は都市やその近郊、半数は郊外で実施され、その他の研究では環境について明記していなかった。大半の研究は男児と女児が同数で、期間は約1年であった。選択した研究において、全般的なバイアスのリスクはさまざまであったが、主要アウトカムのエビデンスに関してはバイアスのリスクが低かった。19件の試験(小児1,202,382名)を全死因死亡率に関するメタアナリシスの対象とした。追跡調査の最長時点で、ビタミンA群ではコントロール群と比較して全死因死亡リスクが12%低いことが、固定効果モデルにより示された(リスク比(RR)0.88、95% 信頼区間(CI)0.83 ~ 0.93、エビデンスの質は高い)。この結果はモデル選択による影響を受けやすく、変量効果メタアナリシスでは要約推定値が異なったが(24%低下、RR 0.76、95% CI 0.66 ~ 0.88)、信頼区間は固定効果モデルのそれと重複した。9件の試験では下痢による死亡率を報告し、VAS群全体で12%低下した(RR 0.88、95% CI 0.79 ~ 0.98、1,098,538名、エビデンスの質は高い)。麻疹、呼吸器疾患、髄膜炎による死亡率について、VASによる有意な効果はみられなかった。VASにより以下の罹患率が低下した。下痢:RR 0.85、95% CI 0.82 ~ 0.87、15件の研究、77,946名、エビデンスの質は低い。麻疹:RR 0.50、95% CI 0.37 ~ 0.67、6件の研究、19,566名、エビデンスの質は中等度。しかし、呼吸器疾患の罹患率や、下痢または肺炎による入院率に有意な効果はみられなかった。VASの開始から48時間以内に嘔吐のリスクが増加した(RR 1.97、95% CI 1.44 ~ 2.69、4件の研究、10,541名、エビデンスの質は中等度)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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