頭蓋内動脈瘤患者における術後神経脱落症候に対する術中軽度低体温

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著者の結論: 

動脈瘤性くも膜下出血のグレードが良好であった患者では、術中軽度低体温がそれら患者の少数で死亡や日常生活動作障害を予防する可能性がある。しかし、信頼区間には利益と有害性の両方の可能性が含まれている。術中軽度低体温が有害であるというエビデンスはない。この治療法はルーチンで適用すべきでない。動脈瘤性くも膜下出血のグレードが不良な患者やくも膜下出血に至らなかった患者では、結論を導くデータが不十分である。動脈瘤性くも膜下出血のグレードが不良な患者を対象とする術後神経脱落症候に対する術中軽度低体温の質の高いランダム化臨床試験は実現可能であると思われる。

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背景: 

頭蓋内動脈瘤の破裂は、最も重篤な臨床病態の1つである動脈瘤性くも膜下出血の原因となる。臨床的には、Hunt-HessまたはWorld Federation of Neurological Surgeons(WFNS)スケールを使用して5グレードに分類できる。グレード4と5は予後不良を予測し、‘不良なグレード’と呼ばれ、グレード1、2、3は‘良好なグレード’として知られる。頭蓋内恒常性と脳代謝の障害がその後遺症において特定の役割を果たすことが知られる。低体温は代謝率を低下させる目的で古くから使用されているが、代謝が障害され、害を及ぼす恐れがある場合は、それによって臓器が保護される。

目的: 

頭蓋内動脈瘤(破裂後または未破裂)患者を対象に、術中軽度低体温が術後死亡および神経脱落症候に及ぼす効果を検討する。

検索戦略: 

Cochrane Stroke Group Trials Register(2011年9月)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL 2011、第3号) 、MEDLINE(1950~2011年9月)、EMBASE(1980~2011年9月)、Science Citation Index(1900~2011年9月)、中国のデータベース11件(2011年9月)を検索した。進行中の試験登録(2011年9月)も検索し、検索した記録の参考文献リストを詳しく調べた。

選択基準: 

頭蓋内動脈瘤(破裂後または未破裂)患者を対象に、術中軽度低体温(32~35℃)を対照(低体温なし)と比較したランダム化比較試験(RCT)のみを対象とした。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが独立して試験を選択し、対象とした試験毎にバイアスのリスクを評価した。データはリスク比(RR)とその95%信頼区間(CI)として示した。

主な結果: 

1,158例の患者を組入れた3件の試験を選択した。各試験で術中軽度低体温に伴う良好な回復率の増加がみられたが、その効果サイズは統計学的有意性に十分ではなかった。低体温が行われた患者577例中76例(13.1%)と低体温が行われなかった患者581例中93例(16.0%)が死亡または要介護となった。患者1,158例中1,086例(93.8%)は、良好なグレードの動脈瘤性くも膜下出血であった。変量効果メタアナリシスの結果、要約RRは0.82であった(95% CI 0.62-1.09、P=0.17)。不良なグレードの動脈瘤性くも膜下出血患者では、低体温群では7例中1例が、対照群では6例中1例が死亡または要介護となった(RR 0.86、95% CI 0.07~10.96、P=0.91)。くも膜下出血に至らなかった患者では、低体温群の患者30例中3例(10%)が、対照群では患者29例中4例(13.8%)が死亡または要介護となった(RR 0.72、95% CI 0.18-2.96、P=0.65)。