閉経前女性の早期乳癌に対するアジュバント療法のためのLHRH作動薬

著者の結論: 

閉経前の内分泌感受性乳癌の女性に対するアジュバント療法としてのLHRH作動薬に関する現時点の発表済みの臨床試験データは、全体的に臨床的利益を裏付けている。しかしながらアジュバント療法としてのLHRH作動薬の位置付けを適切に定義する前に、第3世代化学療法レジメンおよびタモキシフェンを含む現在の臨床的な標準的医療との明確な比較が必要とされる。現時点のデータから結論として、LHRH作動薬と抗エストロゲン戦略の各種組み合わせを現在の標準的な5年間のタモキシフェンと明確に比較している試験の継続が強く支持される。

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背景: 

閉経前女性の乳癌の約60%で核内エストロゲン受容体が発現する(ER+乳癌)。補助内分泌療法はER+乳癌に対して不可欠な医療要素であり、微小転移腫瘍細胞へのエストロゲンの利用を少なくさせることによってその効果が現れる。閉経前女性に対する内分泌戦略として、タモキシフェンによるエストロゲン受容体ブロック、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)作動薬による卵巣でのエストロゲン合成の一時的抑制、あるいは卵巣摘出術または放射線治療による卵巣でのエストロゲン合成の永続的遮断がある。LHRH作動薬、外科手術または放射線治療のいずれかによる卵巣でのエストロゲン合成の同時抑制と併用して、アロマターゼ阻害薬が使用可能である。化学療法のも、卵巣のエストロゲン産生を一時的または永続的に遮断することによって閉経前女性に対して内分泌作用がある。国際コンセンサス・ステートメントは閉経前女性に対して最新の標準的アジュバント内分泌療法として(しばしば化学療法が先行する)タモキシフェン単剤を推奨したが、LHRH作動薬の役割については依然として研究が活発に続いている。

目的: 

早期乳癌の女性に対するアジュバント療法としてのLHRH作動薬を評価する。

検索戦略: 

Cochrane Breast Cancer Group Specialised Registerを2009年2月19日に検索した。この登録は、CENTRAL(コクラン・ライブラリ)(2002年まで)、MEDLINE(1966年~2008年7月)、EMBASE(2002年まで)からの参考文献、ならびにSan Antonio Breast Cancer Symposium、American Society of Clinical Oncology Annual Meeting、およびClinical Oncological Society of Australia Annual Meetingからの抄録のハンドサーチを組み込んでいる。MEDLINE参考文献(2008年8月~2009年2月19日)をチェックした。関連する総説の参照文献リストをチェックした。Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Groupが保管維持する試験リストを2008年1月に最終チェックした。

選択基準: 

閉経前の初期乳癌の女性を対象にアジュバント療法としてLHRH作動薬を評価したすべてのランダム化試験を含めた。特に、以下を比較した試験を含めた。(A)LHRH作動薬(実験群)と別の治療との比較(B)LHRH作動薬+抗エストロゲン(実験群)と別の治療との比較(C)LHRH作動薬+化学療法(実験群)と別の治療との比較(D)LHRH作動薬+抗エストロゲン+化学療法(実験群)と別の治療との比較

データ収集と分析: 

試験報告からデータを収集した。各試験の報告から利用可能なデータを用いて無再発生存、全生存、毒性および生活の質(QOL)について治療間の差の推定値を報告した。試験の報告にばらつきがあるため、メタアナリシスは行わなかった。

主な結果: 

手術可能な乳癌であり、ほとんどがER+の13,000例を超える閉経前女性を対象とした14件のランダム化試験を同定した。異なる比較を行った試験数は以下である。(A) LHRHとタモキシフェンとの比較(試験3件) LHRHと化学療法との比較(試験4件)(B) LHRH+タモキシフェンとタモキシフェンとの比較(試験2件) LHRH+タモキシフェンとLHRHとの比較(試験3件) LHRH+タモキシフェンと化学療法との比較(試験2件) LHRH+アロマターゼ阻害薬とLHRH+タモキシフェンとの比較(試験1件)(C) LHRH+化学療法とLHRHとの比較(試験1件) LHRH+化学療法と化学療法との比較(試験5件)(D) LHRH+タモキシフェン+化学療法と化学療法との比較(試験3件)これらの試験のほとんどで使用されていたLHRH作動薬はゴセレリンであった。治療比較については、ほとんどで試験の数が少なすぎ、ランダム化された患者も少なすぎ、ほとんどが追跡されていないため、異なる治療の相対的効果については信頼できる推定値を導き出すことはできない。(A)LHRH単剤療法:結果から、ER+患者の無再発生存および全生存については、LHRH作動薬単剤によるアジュバント療法は従来の化学療法プロトコル(例CMF)と同様であることが示唆される。LHRH作動薬単剤療法をタモキシフェン単剤と比較するにはデータが不十分であるが、利用可能な結果から、これらの治療が無再発生存の点で同等であることが示唆される。(B)LHRH+抗エストロゲン療法:LHRH作動薬+タモキシフェンの併用を、タモキシフェン単剤と比較するにはデータが不十分である。結果から、LHRH作動薬+タモキシフェンの併用は、LHRH作動薬単剤または化学療法単独よりも優れていることが示唆されるが、検討された化学療法プロトコルは時代遅れのものである。LHRH作動薬+アロマターゼ阻害薬をLHRH作動薬+タモキシフェンと比較したデータは現時点では不確かである。(C)LHRH+化学療法:LHRH+化学療法の併用をLHRH作動薬単剤と比較するにはデータが不十分であるが、1件の研究結果から、ER+患者で同等の有効性が示唆されている。LHRH作動薬+化学療法の併用患者は、化学療法単独患者と比較して、無再発生存および全生存に改善傾向が認められる。(D)LHRH作動薬+化学療法+タモキシフェン:LHRH作動薬+タモキシフェン+化学療法の併用患者は、化学療法単独患者と比較して、無再発生存および全生存に改善傾向が認められる。化学療法+タモキシフェンの現行の標準的治療に追加したLHRH作動薬の効果を評価するにはデータが不十分である。LHRH作動薬による内分泌療法は、評価された化学療法よりも副作用が少ないと考えられる。アジュバント療法としてのLHRH療法の至適期間は不明である。

訳注: 

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