レビューの論点
本コクランレビューでは、歯科治療における嘔吐反射の最適な管理方法を調査する。
背景
嘔吐反射は、咽頭や気道を異物から保護し、窒息を防ぐための正常な反応である。歯科治療中に多くの人が異常な嘔吐反射に悩まされている。これにより治療が困難になる、または中断してしまうこともある。嘔吐反射の管理に用いられる介入は、制吐薬、鎮静剤、局所および全身麻酔、薬草療法、行動療法・認知行動療法、指圧、鍼治療、レーザー治療、補装具の使用などがある。
これらの介入が嘔吐反射を軽減し、治療の完遂に有用であるかについて、有効性と安全性の調査が必要であった。これらの介入と、無介入、プラセボ、他の介入とを比較した。
研究の特性
本レビューは2019年3月18日現在のものである。328例(成人263例および4歳以上の小児65例)の4件の試験を対象とした。これらの人々は歯科治療の際、吐き気を催し治療を中断または治療を適切に行えなかった。
主な結果
ツボP6(手首の内側にあるツボ)への鍼治療は、偽鍼治療と比較した場合、歯科治療の完遂や嘔吐反射の軽減に関して、その有用性を示すエビデンスは不確実であった。同様の介入に鎮静剤を追加しても、差が認められなかった。
(親指での押圧または酔い止めリストバンド(手首に装着するボタン付きのリストバンド)による)内関への指圧と鎮静剤との併用または併用無しは、偽指圧と比較して、差が認められなかった。内関への指圧と器具の併用は、歯科治療の完遂および嘔吐反射の減少に差が認められた。内関への指圧と鎮静剤の併用は、差が認められなかった。
内関へのレーザーは、偽レーザー治療と比較して、治療中の嘔吐反射と嘔吐反射の減少に差が認められた。
対象とした研究は、治療の重要な有害性について全く報告がなかった。
エビデンスの質
この知見に対する信頼性は非常に低い。これは、バイアスのリスクが不明であり、対象とした4件の試験の参加者数が少なかったためである。
結論
歯科治療中の嘔吐反射の管理にどの介入がふさわしいかを示す十分なエビデンスは認められなかった。この分野に関して、より適切な形での研究が行われるべきであると提言する。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.mhlw.go.jp/)[2025.07.22] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD011116.pub3》