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胎児の神経保護を目的とした妊婦に対するクレアチン

本レビューでは、妊婦にクレアチンを投与して胎児の脳の保護に役立つかどうかを調べたランダム化比較試験を見出すことができなかった。

発達中の胎児の脳は、子宮感染、胎盤の血行不良、長時間にわたる胎児血液の低酸素状態などが原因で損傷を受けやすい。妊娠中に発達中の脳が損傷を受けると胎児が死亡する場合があり、生存した場合は、聴覚障害、視覚障害、言語障害、知的障害、脳性麻痺など生涯にわたる問題が発生する。

クレアチンは細胞のエネルギー産生および体内組織が消費するエネルギーの貯蔵に関与している。クレアチンの主な働きは、エネルギー需要が高くかつ変動しやすい体内組織でアデノシン二リン酸(ADP)をアデノシン三リン酸(ATP)に再生させることである。成人はクレアチン1日要求量の約半分を新鮮な魚、肉および乳製品を含む食事から摂取する。残りのクレアチンは体内でアミノ酸から合成する(蛋白の塊を作る)。動物実験から、クレアチンを妊娠中の母親に投与した場合、発達中の胎児の脳を損傷から保護できる可能性が示唆された。妊婦以外(脳に外傷を負った小児、神経変性疾患の成人など)を対象としたヒト試験では、有望な結果が得られており、クレアチンが脳を保護できることが示唆される。また、これらの試験ではいかなる危険性も認められなかったことからも、クレアチンの有望性が確認できる。

妊娠中に胎児の障害が明らかな時点、疑われる時点または可能性がある時点で妊婦にクレアチンを投与し、胎児の脳の保護に役立つかどうかを評価した、既に終了した(または現在継続中の)ランダム化比較試験は同定されなかった。クレアチンが子宮内における胎児の脳損傷に対する保護作用を有するかどうかを確認するためには、ランダム化比較試験が必要である。これらの試験では、小児期および成人期への発達に対するクレアチンの効果をモニターするため、産児を長期間追跡する必要がある。

背景

クレアチンはアミノ酸誘導体で、リン酸化された場合(クレアチンリン酸)、クレアチンキナーゼ反応を介してアデノシン三リン酸(ATP)補充に関与する。細胞が獲得するクレアチンの割合は、魚類、肉類、乳製品が豊富な食品由来のクレアチンと、アルギニン、グリシンおよびメチオニンから生合成したクレアチンが約50:50である。動物実験では、妊娠中の母親に食餌を介してクレアチンを摂取させた場合、胎児の神経保護作用が認められる可能性が示された。妊娠中(胎児の障害が明らかな時点、疑われる時点または可能性がある時点で)の女性にクレアチンを投与した場合、胎児の神経保護作用が認められる可能性があり、その結果、胎児の脳損傷に起因する脳性麻痺やこれに関連する機能障害および身体障害などの有害な神経発達アウトカムのリスクが軽減されるかどうかを評価することは重要である。

目的

胎児の神経保護にクレアチンを使用した場合の効果を評価すること。

検索戦略

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Registerを検索した(2014年11月30日)。

選択基準

既報、未発表、継続中のすべてのランダム化試験および準ランダム化試験を組み入れる予定であった。全文掲載の論文だけでなく、アブストラクトのみ報告された試験も組み入れる予定であった。クロスオーバーデザインおよびクラスターランダム化デザインの試験は除外した。

胎児の神経保護を目的に妊婦にクレアチンを投与した場合(投与経路、投与時期、用量、期間は問わず)と、プラセボ、無治療または胎児の神経保護作用を目的とした他の薬剤を比較した試験を組み入れる予定であった。異なるクレアチン投与法の比較も組み入れる予定であった。

データ収集と分析

既に終了した、または現在継続中のランダム化比較試験は同定されなかった。

主な結果

本レビューの対象となるランダム化比較試験はなかった。

著者の結論

本レビューの対象となるランダム化比較試験が同定されなかったため、クレアチン投与の影響について言及することができない。動物実験で得られたエビデンスは、妊娠中の母親にクレアチンを投与した場合、胎児の神経保護作用が認められることを支持しているが、胎児の神経保護を目的とした妊婦へのクレアチン投与を評価した試験は、これまで発表されていない。クレアチンが母胎および胎児に安全であることが確立されたら、まず、クレアチンと無介入(プラセボの使用が望ましい)または胎児の神経保護を目的とした他の薬剤(超早産児に対する硫酸マグネシウムなど)を比較したランダム化試験を実施すべきである。適切であれば、これらの試験の後にさまざまなクレアチン投与法(用量および曝露期間)を比較した試験を実施すべきである。これらの試験は質が高く、母親および胎児の短期および長期アウトカム(脳性麻痺などの神経発達障害を含む)を評価するのに十分な検出力を有していなければならない。また、医療の利用および費用についても考慮すべきである。

訳注

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
 CD010846 Pub2

Citation
Dickinson H, Bain E, Wilkinson D, Middleton P, Crowther CA, Walker DW. Creatine for women in pregnancy for neuroprotection of the fetus. Cochrane Database of Systematic Reviews 2014, Issue 12. Art. No.: CD010846. DOI: 10.1002/14651858.CD010846.pub2.

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