痛みを伴う処置を受ける乳児の痛みに対するオピオイド以外の鎮痛剤

要点

- オピオイド以外の鎮痛剤については、痛みを伴う処置を受ける乳児の痛みを管理するのに十分なエビデンスは見つからなかった。鎮痛剤(ケタミン)を別の鎮痛剤(オピオイド)または甘い液体(訳注:甘味が疼痛を緩和するという研究結果があり、ショ糖液が使用されることが多い)と比較したわずか2件の小規模な研究が、異なった方法で管理されていることがわかった。

- さまざまな鎮痛剤の有益性と有害性、そしてそれらを投与する最善の方法についてよりよく理解するためには、さまざまな鎮痛剤に関するより大規模な研究が必要である。

何が知りたかったのか?

特に早産や病気で生まれた乳児は、入院中に多くの痛みを伴う処置を受けることがある。十分かつ安全に痛みを和らげるためには、どの鎮痛剤が最適なのかはまだはっきりしていない。特に、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と、ケタミンなどのN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬を、痛みを伴う処置中の乳児に対して評価した研究に焦点を当てた。これらの鎮痛剤が処置中の乳児の痛みの強さにどのような影響を与えるか、また鎮痛剤が引き起こす副作用について調べたいと考えた。

何を行ったのか?

以下の比較を行った研究を検索した:

- NMDA受容体拮抗薬(ケタミンなど)または非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェンなど)と、無治療、プラセボ(ダミー治療)、甘い溶液の経口投与、鎮痛薬以外の介入との比較;

- ある鎮痛剤と別の鎮痛剤、あるいは

- 同じ鎮痛剤を異なる方法で投与する(例:口、または静脈から)。

研究を評価し、研究方法に基づいてエビデンスの信頼性を評価した。

何がわかったのか?

痛みを伴う処置を受けた合計269人の乳児を含む2件の研究を見つけた。ナイジェリアで行われた1件の研究では、割礼のためにケタミンを投与する場合と、シュガーシロップを口から投与する場合とが比較された。インドで行われたもう1件の研究では、眼疾患のレーザー治療中に静脈から投与されたフェンタニルとケタミンが比較された。どちらの研究でも、ケタミンを投与された乳児の疼痛スコアは低かった。しかし、これらの研究は異なる方法を用い、異なる手順を評価しており、結論を導き出すのは困難である。後者の研究では、呼吸と血圧の問題に対する治療の効果についても不明確なエビデンスが示されている。

エビデンスの限界は?

このエビデンスに確信を持っておらず、結果については非常に不確かである。その理由は、含まれる研究が限られていること、規模が小さいこと、誤差が生じやすい方法を用いていることである。

このエビデンスはいつのものか?

エビデンスは、2022年6月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳[2023.08.30]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015179.pub2》

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