単一遺伝子疾患に対する着床前遺伝子検査での5日目と3日目における胚生検の比較

背景

嚢胞性線維症などの単一遺伝子疾患の既往歴や家族歴を持つ夫婦は、同じ遺伝子疾患を持った子どもを出産する確率を減らすために生殖補助医療(ART)を受けられるようになった。これは、単一遺伝子疾患の着床前遺伝子検査(PGT-M)と呼ばれるものである。PGT-Mでは、受精卵から細胞を採取し(生検)、遺伝子疾患について分析が行われた後、疾患を持たない受精卵が女性の子宮に戻される。生検は、胚発生後の3日目または5日目に行うことができ、現在は5日目における生検が最も広く用いられている。胚の生検を3日目に行うか、5日目に行うかによって、胚の発生の進展や着床、ならびに妊娠および周産期の結果に異なる影響を及ぼす可能性がある。

主な結果

ARTを受けている合計20人の女性を対象として、PGT-Mのために行われた5日目と3日目における胚生検を比較した1件のランダム化比較試験が見つかった。この研究からは、生児出生または流産の確率に違いがあるかどうかを示すのに十分なエビデンスが得られず、結果については非常に不確実であった。

エビデンスによると、3日目に胚生検を行った場合の生児出生率を40%と仮定した場合、5日目に行った場合の生児出生率は15%から85%の間であることが示唆されていた。

その他の妊娠および周産期の結果に関するエビデンスについては、報告が不十分であり、結論は出ていない。

エビデンスの限界

本レビューでは、1件の小規模な研究しか見つけられず、また研究者は参加者が3日目と5日目のどちらの生検を受けたかを知っていたため、エビデンスに対する信頼性は非常に低い。つまり、この結果は慎重に解釈されるべきであり、知見について確認するためのさらなる研究が必要である。

このエビデンスはいつのものか?

2021年12月時点のエビデンスである。

訳注: 

《実施組織》小泉悠 翻訳、杉山伸子 監訳[2023.01.28]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013233.pub2》

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