転移性ホルモン感受性前立腺癌の治療に対するアンドロゲン除去療法へのタキサン系化学療法の追加

レビューの論点

本レビューの目的は、ホルモン療法にタキサン系化学療法を追加することによって、転移性ホルモン感受性前立腺癌患者の転帰が改善するかどうかを明らかにすることにあった。この疑問に答えるために、関連のあるすべての試験を収集、解析し、3件の試験を特定した。

背景

前立腺癌と診断される患者の約16%は診断時にがんの転移が認められる。さらに15~30%の患者には、一次治療後に癌の再発がみられる。ホルモン療法(男性ホルモンのレベルを抑える薬剤)は進行癌に対する一次治療であるが、これによって治癒することはなく、最終的には再発する。近年、化学療法(癌細胞を死滅させる化学物質)を早期に行った場合に患者の状態が改善するかどうかが複数の試験によって検討されてきた。

試験の特性

本エビデンスは2018年8月現在のものである。計2,261例の患者を対象とした3件の試験(具体的にはランダム化比較試験)を特定した。これらの試験では、ドセタキセル(抗癌剤)とホルモン療法の併用と、ホルモン療法単独とが比較されていた。

主要な結果

ホルモン療法にタキサン系化学療法を追加することによって、全生存期間および癌特異的生存期間が延長し、さらに疾患進行を抑えることができる可能性が高い。また、12カ月時点でのQOL(生活の質)の改善はわずかで、重要とはいえない場合がある。タキサン系化学療法で患者を治療した場合、副作用が増加する可能性がある。

エビデンスの確実性

あらゆる原因による死亡までの期間、前立腺癌による死亡のリスクおよび疾患進行までの期間に関するエビデンスの確実性は、中等度と判断した。つまり、われわれの評価は事実に近い可能性が高いが、これらの試験には結果に対する信頼性を低下させるような限界があったということである。グレード3~5の有害事象(副作用)、全グレードの有害事象、有害事象により治療を中止した患者、およびQOLに関するエビデンスの確実性は低かった。つまり、これらの試験の限界および不正確さ(推定値の変動性)により、治療の真の効果は本レビューが示すものとは大きな差がある可能性がある。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)生田亜以子 翻訳、榎本裕(三井記念病院泌尿器科)監訳 [2019.1.3] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012816》

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