局所進行性または転移性乳がんに対するPARP阻害薬

本レビューの目的

PARP阻害薬は腫瘍細胞のDNA修復を妨げ、細胞死に至らせる新しいクラスの薬剤である。このコクランレビューでは、局所進行性または転移性乳がん患者の治療における、PARP阻害薬の有効性と安全性を明らかにすることを目的とした。コクランレビュー著者は、この疑問に答えるために関連する全試験を収集および分析し、この問題を研究している試験5件を特定した。本レビューの主な目的は、PARP阻害薬により生存期間が延長したかを調べることにあった。また、PARP阻害薬により病気の進行(通常、20%を超える病変部の増大または新たな転移の形成と定義される)が抑えられたか、腫瘍が縮小したか、あるいは副作用が増えたかについて評価した。

本レビューで検討された内容

局所進行性または転移性乳がん患者を対象とし、以下の1)または2)について比較しているランダム化比較試験をレビューした。 1)PARP阻害薬併用化学療法と、同じ内容の化学療法単独の比較 2)PARP阻害薬による治療と他の化学療法の比較 このレビューの主要評価項目である全生存期間と、副次評価項目である無増悪生存期間、腫瘍縮小率、生活の質(QOL)および副作用について報告している試験をレビューした。

このレビューの更新状況

2020年6月までに発表された試験を検索し、1,474人の参加者が参加した5件の試験結果を含めた。

本レビューの主な結果

このシステマティックレビューにより、HER2陰性(ヒト上皮成長因子受容体2と呼ばれるタンパク質の検査が陰性の乳がん患者)かつ生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性(BRCA遺伝子に変異がある患者)の局所進行性乳がんまたは転移性乳がんの患者に対し、PARP阻害薬について以下のことが明らかになった。

- PARP阻害薬により死亡リスクが13%減少する可能性がある(すなわち、PARP阻害薬による治療を受けた患者は、比較対照の治療群として治療を受けた患者よりも全体的に余命が長い)
- PARP阻害薬により病気の進行リスクが37%減少する
- PARP阻害薬により腫瘍縮小の可能性が高くなる可能性がある(PARP阻害薬の66.9%に対し他の治療では48.9%)
- PARP阻害薬の副作用は、他の治療群と比較してほとんどまたはまったく差がない

QOLのデータは2件の試験で収集されており、その得られたエビデンスから、参加者の主観評価(患者報告アウトカム)では、PARP阻害薬は医師が選択する化学療法より優れていることが示された。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本がん医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外がん医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)中村 奈緒美 翻訳、田原 梨絵(乳腺科、乳腺腫瘍内科)監訳 [2021.05.27] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD011395.pub2》

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