メインコンテンツに移動

水道水へのフッ化物添加はむし歯の予防に有効か?

要点

- 水道水へのフッ化物添加は、小児における乳歯のう蝕をわずかに減少させる可能性がある

- 水道水へのフッ化物添加は、う蝕に罹患していない小児がわずかに増える可能性がある

- 水道水へのフッ化物添加の利点は、歯磨き粉(歯磨剤)へのフッ化物添加が普及する以前よりも少ない可能性がある

むし歯(う蝕)とフッ化物の使用

むし歯(う蝕)は、成人や小児のほとんどが罹患する世界的な問題である。う蝕を治療せずに放置すると、痛みを引き起こし、歯を抜かなければならなくなる可能性もある。

フッ化物は無機物として水中にさまざまな濃度で存在し、う蝕を予防する効果がある。1975年以降、フッ化物はほとんどの歯磨剤に含まれている。フッ化物は洗口液にも使用されており、歯科医師はフッ化物を治療に応用している。また、地域の水道水にフッ化物を添加することも可能であり、この場合、当該地域のすべての人に対しフッ化物を応用することができる。

小児が永久歯の形成期にフッ化物を過剰に摂取すると、永久歯に白い斑点が生じることがあり、これは歯のフッ素症と呼ばれる。歯のフッ素症は多くは非常に軽度で、ほとんどが目立たない白い線や筋ができる程度である。しかし、まれにフッ素症が顕著に現れることもあり、歯の見た目に悪影響を及ぼすこともある。

何を調べようとしたのか?

フッ化物を添加した水道水とフッ化物を添加していない水道水を比較するために、以下の点について調査を行った。

- う蝕の徴候のある歯の数や、歯の表面の数を減らすかどうか

- う蝕のない人の数を増やすかどうか

また、有害事象についても調査を行った。

何を行ったのか?

水道水にフッ化物を添加した地域とフッ化物を添加しなかった地域を比較した研究について検索を行った。

前回のコクランレビューでは、歯のフッ素症と水道水中のフッ化物濃度を報告した研究についても検索を行ったが、水道水へのフッ化物添加と歯のフッ素症との関連については広く認知されているため、今回のエビデンスの更新には含めなかった。

何を見つけたのか?

水道水へのフッ化物添加の効果を評価した21件の研究が見つかった。また、水道水へのフッ化物の添加を中止した場合の影響を評価した研究も1件見つかった。これらの研究では小児におけるう蝕のみが評価されていた。

今回のレビューの更新には含めなかったが、水道水へのフッ化物添加と歯のフッ素症との関連を評価した研究が135件見つかった。

主な結果

1975年以降に実施された研究では、水道水にフッ化物を添加することで小児の乳歯のう蝕がわずかに減少する可能性があることが示された。しかし、フッ化物の添加が、小児のう蝕のある永久歯の数や、う蝕のある永久歯表面の数を減少させるかどうかは確認できなかった。

水道水にフッ化物を添加することで、乳歯または永久歯のどちらにもう蝕のない小児の数がわずかに増加する可能性があるが、ほとんどまたは全く差がない可能性も含まれている。

1975年以前に行われた研究では、水道水へのフッ化物添加が、小児のう蝕を予防する明確で重要な効果が示されている。しかし、1975年以降、多くの歯磨剤にフッ化物が含まれるようになったため、現在ではすべての集団において同様の効果が見られるとは考えにくい。

水道水からフッ化物を除去した場合におけるう蝕への影響については不明であった。

また、水道水へのフッ化物添加が、富裕層と貧困層におけるう蝕への罹患率の差を減少させるかどうかについても不明であった。

前回のレビューでは、水道水にフッ化物を添加すると、歯のフッ素症への罹患数が増加することがわかった。水道水に0.7mg/Lのフッ化物が含まれている場合、約40%の住民が何らかの程度の歯のフッ素症を発症する可能性があり、約12%に、見た目に影響する程度のフッ素症が発症する可能性があった。また、水道水に含まれるフッ化物が他の有害事象につながるかどうかについては不明であった。

エビデンスの限界は何か?

本レビューには、水道水中のフッ化物濃度が意図的に変化するように地域を選択した研究が含まれているため、エビデンスに対する信頼性は限られている。このような研究方法は、このテーマにおいては一般的であるものの、地域間で結果に影響を及ぼす可能性のある差異が存在することが示唆されている。さらに、他の研究結果と異なる結果がいくつか存在し、有益性と無益性の両方の可能性を含んだ結果も認められた。

フッ化物入り歯磨剤の普及や、その他のう蝕予防法が改善される以前に行われた古い研究も存在したため、これらの結果の現在における妥当性を判断する必要があった。しかし、フッ化物入り歯磨剤や他のう蝕予防法を容易に利用できず、う蝕への罹患が多い国では、これらの結果は依然として関連性が高い可能性がある。

本エビデンスはいつのものか?

本レビューは、水道水へのフッ化物添加がう蝕に及ぼす影響に関する前回のレビューを更新したものであり、2023年8月時点におけるエビデンスである。

また、水道水へのフッ化物添加と歯のフッ素症との関連に関するレビューのエビデンスは、2015年2月時点におけるものである。

訳注

《実施組織》小泉悠 小林絵里子 翻訳[2024.11.05]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD010856.pub3》

Citation
Iheozor-Ejiofor Z, Walsh T, Lewis SR, Riley P, Boyers D, Clarkson JE, Worthington HV, Glenny A-M, O'Malley L. Water fluoridation for the prevention of dental caries. Cochrane Database of Systematic Reviews 2024, Issue 10. Art. No.: CD010856. DOI: 10.1002/14651858.CD010856.pub3.