重度精神疾患を持つ人に対してICT(情報通信技術)を活用した促しを用いること

近年、重度精神疾患を持つ人々へ情報を伝えるために、ICT(情報通信技術)を活用することが増えている。ICTとは、情報伝達やコミュニケーションを行う技術的手段の総称とされており、電話、テレビ、ラジオ、コンピュータ、携帯デバイスの使用が含まれる。

重度精神障害を持つ人々は、しばしば「治療コンプライアンス」、すなわち治療プログラムに従うことに困難を抱えている。そのような人々は、薬の服用や受診の予約時間を覚えておくのが難しいことがある。また、不快な副作用のために薬をやめてしまう場合や、病識がなく治療を受ける必要がないと考えている場合もある。治療コンプライアンスの不良は、健康状態の悪化だけでなく、再発・入院を引き起こす可能性がある。重度精神疾患を持つ人々のコンプライアンス向上を支援するために、医療従事者が用いるいくつかの方法があり、その一つが促しである。促しの目的は、電話や直接の訪問、案内状の郵送を通して注意を喚起することで、患者が治療上の指示に従い、予約の時間を守れるよう助けることである。最近では、ICTを活用した促しが行われるようになってきた。このレビューでは、重度精神疾患を持つ患者の治療コンプライアンスを支えるための、ICTを活用した促しの有効性を調査した。ランダム化比較試験の検索が2012年に行われた。ICTを活用した促しと標準的なケアを比較した2件の試験が組み入れられた。レビューの著者は、これらのデータの質を「中程度」から「低い」と評価した。データの量が少ないため、ICTを活用した促しが効果的かどうか明言することはできない。服薬コンプライアンスについては、1件の試験のみが計測していた。その試験からは、ICTを活用した促しが服薬を促進させる可能性が示唆されたが、明らかなエビデンスは見つからなかった。患者の病識については、いくらかの良い効果があった。しかし、病識は中期的に見て改善しただけで、短期的には差がないように思われた。また、治療に対する患者の満足度にもいくらかの良い効果が認められたが、結果の分析は不正確であった。精神状態や生活の質も改善が見られたが、軽微であった。患者にとっての受け入れやすさについては、2つの介入に差があるという明らかなエビデンスは無かった。サービス利用、行動、費用、有害作用については、研究内で示されていなかった。現在、進行中の試験があるが、さらに追加でしっかりとした試験が行われる必要がある。

訳注: 

《実施組織》 五十嵐百花 翻訳, 佐藤さやか 監訳 [2021.3.22] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所地域・司法精神医療研究部(以下、NCNP精研地域部;cochranereview.ncnpcmhl@gmail.com)までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。NCNP精研地域部では最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD009960.pub2》

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