心血管系疾患の予防に対するセレン補充

セレンにより心血管系疾患や慢性疾患のリスクが低下すると考え、セレンの強化食品、サプリメント、高含有剤の使用が、近年多くの国で増加している。従って心血管系疾患や糖尿病などのよくみられる病気で補充されることが多い栄養物の効果を理解することは重要である。このレビューでは心血管系疾患の発症予防のため、健康な成人に投与されたセレン補充の効果を評価した。セレン補充により心疾患に関するリスク因子が減少するかどうかも調べた。健康な成人19,715名をセレン補充かプラセボランダム化した12件の試験を認めた。これらの試験の参加者の大多数は米国の男性であった。米国では栄養状態が良好で、天然の食品から大量のセレンが摂取されている。全体として選択した研究バイアスは低リスクであると考えられた。このレビューでは、健康な成人に投与されたセレン補充による主要な心血管系疾患の発症予防はみられなかった。過去の一部の研究で示唆されているように、セレンの補充の際の2型糖尿病の発症リスクの上昇は、このレビューでははっきりと否定することはできなかった。まとめると、現在利用可能なエビデンスであるこのレビューでは、セレン補充は心血管系疾患に有益とも有害とも述べられていない。しかし既に栄養状態が良好で、天然の食品から大量のセレンを摂取している人にはおそらくセレンの補充は必要ないと思われる。

著者の結論: 

現在利用可能な限定的試験のエビデンスでは、CVDの一次予防でのセレンの補充を支持していない。

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背景: 

セレンは、酸化ストレスから保護し、心血管系疾患(CVD) などの慢性疾患を予防する可能性がある多数のセレン蛋白の重要な成分である。しかし、観察研究では、セレン摂取とCVDリスクに一貫した関連性は示されておらず、セレン高暴露による2型糖尿病リスクの上昇の可能性が懸念されている。

目的: 

CVDの一次予防に対するセレン単独の補充の有効性を明らかにし、2型糖尿病についての有害な作用の可能性を調べること。

検索方法: 

以下の電子的データベースを検索した:コクラン・ライブラリ の Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) (2012年10月第10/12号)、 MEDLINE (Ovid) (1946年~2012年10月第2週)、 EMBASE Classic + EMBASE (Ovid) (1947年~ 2012年第42週)、 CINAHL (EBSCO) (~2012年10月24日)、 ISI Web of Science (1970年~ 2012年10月24日)、 PsycINFO (Ovid) (1806年 ~2012年10月第3週)、コクラン・ライブラリの Database of Abstracts of Reviews of Effects (DARE)、Health Technology Assessment Database and Health Economics Evaluations Database (2012年10月第4/4号)。 試験登録リストおよびレビューと論文の参考文献リストを検索し、本分野の専門家に連絡を取った。言語の制限は設けなかった。

選択基準: 

一般人口の全年齢の成人とCVD高リスクの成人の両方を対象にした、主要CVDエンドポイント、死亡率、CVDリスク因子の変化、および2型糖尿病に及ぼすセレン単独の補充効果についてのランダム化比較試験(RTC)。比較群がプラセボまたは無介入の試験のみを考慮した。 3か月以上の追跡期間のある研究のみをメタアナリシスに組み入れ、それより短期の研究は記述的に処理した。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が独立して試験の質を評価し、データを抽出した。その後追加された情報について研究著者に問い合わせた。

主な結果: 

12件の試験(3か月以上の期間の試験7件)が選択基準を満たし、19,715名の参加者がランダム化された。米国で実施された2件の大規模試験(SELECT および NPC)では臨床イベントが報告された。総死亡(率) (RR 0.97、 95% CI 0.88 ~ 1.08)、CVD死亡率(RR 0.97、 95% CI 0.79 ~ 1.2)、非致死的CVDイベント(RR 0.96、 95% CI 0.89 ~ 1.04)、全CVDイベント(致死的および非致死的) (RR 1.03、 95% CI 0.95 ~ 1.11)に対し、セレン補充による統計学的に有意な効果はなかった。 セレン補充による2型糖尿病リスクの小さい上昇がみられたが、統計学的有意性には届かなかった(RR 1.06、 95% CI 0.97 ~ 1.15)。 SELECT試験で報告された、セレン補充により増加した他の有害作用には、脱毛症(RR 1.28、 95% CI 1.01 ~ 1.62)、グレード1~2の皮膚炎(RR 1.17、 95% CI 1.0 ~ 1.35)があった。 セレン補充により総コレステロールが低下したが、統計学的有意性には届かなかった(WMD - 0.11 mmol/L、 95% CI - 0.3 ~ 0.07)。高比重リポ蛋白(HDL)平均値は変わらなかった。高比重リポ蛋白(HDL)平均値は変わらなかった。血圧に対する効果を調べた長期試験はなかった。全体として選択した研究バイアスは低リスクであると考えられた。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.9]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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