認知症の人をインフォーマル・ケアをする人(介護する家族)に対する電話カウンセリングの有効性と経験

論点

認知症の人の世話は、インフォーマル・ケアをする人の精神的および肉体的な健康と社会生活にマイナスの影響を頻繁に与える。したがって、こういったインフォーマル・ケアをする人にサポートを提供する必要がある。インフォーマル・ケアをする人は一般的に家族であり、自宅で認知症の人の世話をする。

電話カウンセリングとは?

個人の心配事を引き出し、電話で個人が話した心配事に応じて傾聴、サポート、情報提供、または指導を提供する。

本レビューの目的

このレビューの目的は、電話カウンセリングが認知症の人の介護者の抑うつやその他のストレスの症状を軽減する効果的な方法であるかどうかを調査することであった。また、電話カウンセリングのどの側面を改善することができると考えられるかを調査した。

レビューの主な結果

電話カウンセリングを治療なし、または通常のケアや雑談をするような電話と比較した科学的研究を検索した。電話カウンセリングの効果(有効性)を調査した9件の研究と、体験の質を調査した2件の調査が見つかった。

有効性研究では、以下の3種類の電話カウンセリングを調査した。調査方法は、電話カウンセリングのみ(6つの調査)、電話カウンセリングとビデオセッションの組み合わせ(1つの調査)、電話カウンセリングとビデオセッションとワークブックの組み合わせ(2つの研究)であった。これらは、電話カウンセリングが認知症の人の介護者の抑うつ症状を軽減するのに効果的であるといういくつかのエビデンスを提供したが(3つの研究)、ストレスや不安などの他の結果について明確な好ましい効果は示されなかった。

電話カウンセリングの経験的側面を調査した研究は、以下の3つの主要な領域をカバーする幅広い介護者のニーズ(16のテーマ)を明らかにした。ニーズの内容は、電話カウンセリングの実施を成功させることに関する障壁または電話カウンセリングの実施を成功させることを可能にする要因、カウンセラーの感情的な態度、電話カウンセリングの内容であった。

全試験においてエビデンスの質は中等度であった。

結論

両方の結果の分析、すなわち、有効性と介護者の電話カウンセリングの経験に関する情報との比較により、これまでのところ電話カウンセリングでは満たされていないニーズが明らかになった。経験の側面を調査した研究は、非常に限られた範囲の電話カウンセリングをカバーした。このレビューの結果は、含まれる研究の数が少なく、エビデンスの質が中程度であるため、注意して解釈する必要がある。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、冨成麻帆 翻訳[2020.05.18]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD009126.pub2》

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