分娩における疼痛管理に対する、盲検化コントロールと比較した滅菌水皮内注射または皮下注射

著者の結論: 

このアウトカムは、臨床で適用するには高度の限定された結論である。滅菌水が腰痛や他の分娩痛に対し、有効性が高いという頑健なエビデンスはほとんど認められなかった。また、分娩や他の母体/胎児アウトカムにおいて差を認めなかった。分娩における疼痛緩和に対する滅菌水の有効性を示すには、方法論的に厳密なさらなる大規模研究が必要である。

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背景: 

滅菌水皮内注射または皮下注射は、分娩における疼痛緩和法の一つとして急速に支持を集めつつあり、その適正な評価が必要である。世界中の女性にとって、分娩の際の適切な鎮痛は重要である。滅菌水注射は高価ではなく、基本的な器具しか必要とせず、ほとんど副作用がないと考えられている。分娩痛にも作用すると考えられている。

目的: 

分娩の際の疼痛(典型的な収縮痛および難治性背部痛の両方)緩和に対する滅菌水注射の効果を、プラセボ(等張食塩水注射)または非薬物的介入と比較して検討すること、ならびに分娩様式および分娩時期に対する関連性のある効果、母体および児の双方の安全性を同定すること。

検索戦略: 

Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Register(2011年5月30日)、MEDLINEおよびEMBASE(2010年1月~2011年5月30日)を検索し、合わせて回収した研究およびレビュー論文の文献リストも検索した。

選択基準: 

分娩時の疼痛緩和に滅菌水皮内注射または皮下注射を使用している、二重盲検ランダム化比較試験を対象とした。出産場所、経産歴、リスク、年齢、体重、妊娠週数、分娩期の制限は設けなかった。可能性のある比較対照は、プラセボ(食塩水)および非薬物的介入(催眠またはバイオフィードバックなど)であった。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に試験の適格性および質を評価し、データを抽出した。第三のレビューアとの討議により不一致や不明点を解決した。主要アウトカム指標は、50%以上の疼痛緩和、または30%以上の疼痛緩和、患者による全般的印象の「良好」以上の変化、分娩様式、周産期罹病率および死亡率、母体合併症、ならびに有害事象であった。副次的アウトカムは、何らかの疼痛緩和があった女性、臨時の追加的鎮痛剤の使用、および投与群での平均的疼痛緩和であった。研究における潜在的バイアスについて明確に判断した。

主な結果: 

766例の参加者を含む7件の研究を同定し、4件は皮内注射、2件は皮下注射、1件は両方を使用していた。すべて、分娩時の腰痛のみを報告していた。方法論的質は良好であったが、4件の研究は投与群の症例数が少なく、アウトカムデータが不完全で実施バイアスがあったため、バイアスリスクが高かった。 すべての研究は投与群の平均スコアまたはスコア中央値を報告しており、滅菌水群での疼痛低下の方が大きいという所見であった。しかし、疼痛強度または緩和に対する正規分布を示さず、異なるスケールを使用していたため、メタアナリシスは不適当であった。主要な二値有効性アウトカムを報告している研究はなかった。1件は、自己採点による4/10 cm以上の疼痛低下の例数を報告しており、滅菌水群(50%~60%)の方がプラセボ群(20%~25%)に比較して本アウトカムの有効性を示した例数が有意に多かった。 帝王切開率[リスク比(RR)0.58、95%信頼区間(CI)0.33~1.02]、器械的分娩(RR 1.31、95%CI 0.79~2.18)、臨時の追加的鎮痛(RR 0.86、95% CI 0.44~1.69)、分娩時期、アプガースコアに滅菌水群と食塩水群で有意差はなかった。2件の研究の報告では、滅菌水投与女性の方が将来も同じ鎮痛を望む者が多かった。 女性の疼痛緩和に対する満足度、分娩におけるコントロール感覚、出産経験に対する満足度、母子相互作用、母乳栄養率、母体罹病率、児の長期的アウトカム、費用について報告している研究はなかった。注射に伴う一過性の疼痛は滅菌水の方にあったが、それ以外に有害事象は報告されなかった。

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