乳癌手術後の即時再建術と遅延再建術との比較

著者の結論: 

乳癌手術後の遅延再建術に対する即時再建術の有効性についての現在のエビデンスレベルは、方法論的欠陥および高バイアスリスクを伴う1件のRCTに基づいており、これらの手術的選択肢からの選択について確信を持って意思決定できるものではない。質の高いエビデンスが入手可能となるまで、臨床医は関連性のあるガイドラインおよびプロトコルの推奨を考慮することを望むと思われる。本分野でのRCT実施には制限および倫理的制約が認められているが、臨床アウトカムおよび心理的アウトカムに注目した、十分な検出力のある比較試験がなお必要である。本主題でのRCTは不足していることを考慮すると、将来の本レビューにおいては、RCT以外で特に良好な質のコホートを有する研究デザインおよび症例対照研究について考察する予定である。

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背景: 

乳癌は女性で最も多くみられる癌で英国での生涯罹患率は9人中1人である。治癒的処置には手術を要し、アジュバント療法およびネオアジュバント療法を伴うこともある。多数の女性で、乳房切除術後の乳房再建術は身体像を回復し生活の質を改善するのに必須である。再建術の時期は乳房切除術時の即時か、あるいは術後に遅らせることもある。心理社会的罹病率、審美的外観および合併症率などのアウトカムは二つのアプローチ間で異なる。

目的: 

乳癌手術後の遅延再建術と比較した即時再建術の効果を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Breast Cancer Group (CBCG) Specialised Register(2010年7月22日)、MEDLINE(2008年7月~2010年8月26日)、EMBASE(2008年~2010年8月26日)WHO International Clinical Trials Registry Platform (ICTRP)(2010年8月26日)を検索した。

選択基準: 

年齢および乳癌病期を問わない女性患者を対象に、遅延再建術または無再建術と即時再建術を比較しているランダム化比較試験(RCT)。乳房切除術と同時、あるいは乳房切除術後のいずれかの時点で施行された片側または両乳房への再建術として認められている全ての方法を考慮に入れた。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に論文を調査し、試験の詳細を抽出し、1件の適格な研究のバイアスリスクを評価した。

主な結果: 

女性64例を対象とした1件のRCTのみを選択した。本研究のバイアスリスクは高いと判断した。術後罹病率および死亡率については扱っておらず、術後の患者の美容的評価および心理社会的健康についての副次アウトカムの報告は不十分であった。限定的なデータに基づき、信頼性は低いが、遅延または無再建術に比べて、即時再建術により術後3ヶ月で報告された精神病罹病率が低下したというエビデンスがみられた。

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