要点
-
脊椎マニピュレーション療法(Spinal manipulative therapy:SMT―セラピストが脊椎の関節を動かす手技療法)は、「偽」SMTと比較して、痛みをわずかに軽減し、機能を中等度に改善するかもれしない。
-
SMTは、無治療と比較して、痛みを中等度に軽減し、機能を大幅に改善するかもしれない。
-
有害(望ましくない、あるいは有益でない)作用について報告した研究は半数未満であった。筋肉痛や腰痛の一時的な悪化などの有害作用はよく見られたものの、SMTに関連する重篤な有害作用は認められなかった。
非特異的慢性腰痛とは?
腰痛は、社会に大きな負担をもたらす、一般的かつ日常生活に支障をきたす症状である。多くの場合、生活の質の低下、労働時間の損失、そして多額の医療費につながる。 ここでは、慢性腰痛を「12週間以上続く痛み」と定義する。本研究では、主に腰部に痛みがある人、および臀部や下肢に痛みが放散する人に焦点をあてた。
慢性腰痛はどのように治療されるのか?
脊椎マニピュレーション療法(SMT)は、慢性腰痛の一般的な治療法であり、カイロプラクター、マニュアルセラピスト、オステオパシー療法士などの医療専門家によって世界中で実践されている。SMTは、痛みを軽減し、機能を改善し、患者が通常の活動に戻れるよう支援するための、マニピュレーションとモビライゼーションの両方を含む、脊椎に対する「手技」による治療法である。 SMTには、穏やかな動きやストレッチ(モビライゼーションと呼ばれる)や、しばしば「ポキッ」という音が伴う、素早く制御された押し込み(マニピュレーションと呼ばれる)が含まれることがあり、これらは可動域の改善や痛みの軽減に役立つとされている。
わかったこと
慢性腰痛患者において、SMTが痛みや機能の改善につながるか、あるいは有害作用をもたらすかどうかを調査したいと考えた。 感染症、腫瘍、骨折など、特定の症状・疾患に起因する腰痛のある人は対象から除外した。
実施したこと
SMTと以下を比較した研究を検索した:
-
偽(シャム)SMT;
-
無治療;
-
運動療法など、単純で非外科的なケアを意味するその他の「保存的」治療。
研究結果を比較、要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づいてエビデンス(科学的根拠)の信頼性を評価した。今回のアップデートは、2011年に最後に報告されたレビューを更新したものである。
わかったこと
今回のアップデートでは、慢性腰痛患者におけるSMTの有用性を評価した、11,866例を対象とした76件の研究(1978年から2024年に報告されたもの)を同定した。 参加者は男女混合で、そのほとんどが中年層であった。研究の大部分は高所得国(53件、例:アメリカ、イギリス)で実施され、23件は中所得国(例:ブラジル、インド)で実施された。低所得国で実施された研究はなかった。
主な結果:有益性
100点満点で10点の差は、患者にとって有意義なものとみなされ、症状の顕著な改善を反映している可能性がある。
SMTと偽SMTの比較
痛み
SMTを受けた患者は、SMT開始から1カ月後、0~100の尺度で、偽SMTを受けた患者と比較して、痛みが平均で 7.0 ポイント改善した。
機能
SMTを受けた患者は、SMT開始から1カ月後、0~100の尺度で、偽SMTを受けた患者と比較して、機能が平均 8.8 ポイント改善した。
SMTと無治療の比較
痛み
SMTを受けた人々は、SMT開始から1カ月後、0~100の尺度で、治療を受けなかった人々と比較して、痛みが平均 14 ポイント改善した。
機能
SMTを受けた患者は、治療を受けなかった患者と比較して、SMT開始1カ月後に0~100の尺度で、機能が平均 12.9 ポイント改善した。
SMTとその他の保存的治療との比較
痛み
SMTを受けた患者は、SMT開始から1カ月後、0~100の尺度で、他の保存療法を受けた患者と比較して、痛みが平均 4.7 ポイント改善した。
機能
SMTを受けた患者は、SMT開始から1カ月後、0~100の尺度で、他の保存的治療を受けた患者と比較して、機能が平均で 4.9 ポイント改善した。
主な結果:有害性
SMTの有害(すなわち、望ましくない、あるいは有益でない)作用について報告した研究はごくわずかであった。これらには、筋肉痛や腰痛の一時的な悪化などが含まれていた。SMTに関連する重篤な有害作用は認められなかった。
エビデンスの限界
これらの研究では、さまざまなSMT技法が用いられ、その実施回数もまちまちであり、報告された結果にも大きなばらつきが見られたため、このエビデンスに対する信頼性は低い。 いくつかの研究では参加者が少なく、一部の研究は研究デザインに不備があった。したがって、SMTの有用性が過大評価されているかもしれない。
現時点でのエビデンス
本レビューは2024年10月18日現在のものである。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.mhlw.go.jp/)[2026.07.14]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD008112.pub3》
このコクランレビューは、元々は英語で作成されました。翻訳の正確性は、当該翻訳を担当した翻訳チームが責任を負います。質の高い翻訳を保証するため、この翻訳は細心の注意を払って作成され、標準的なプロセスに従って行われています。ただし、不一致、不明確または不適切な翻訳の場合、英語の原文が優先されます。




