ピロナリジン-アーテスネートによる合併症のない熱帯熱マラリア原虫によるマラリアの治療法

レビューの目的

このコクランレビューの目的は、抗マラリア薬であるピロナリジン・アーテスネートが、重要なタイプのマラリア(熱帯性マラリア原虫)の合併症のない症例に対して有効かつ安全であるかどうかを調べることであった。この疑問に答えるため、関連するすべての研究を収集・分析したところ、10件の研究が見つかった。

主な結果

ピロナリジン-アーテスネートは、合併症のない熱帯熱マラリア原虫によるマラリアの治療に有効である。ピロナリジン-アーテスネートは一般的に安全であるが、投与された人の中には血液検査で肝障害が示唆される人がいる。これは長続きしないし、病気にもならないようだ。

本レビューで検討された内容

世界保健機関(WHO)は、アルテミシニン系複合療法(ACT)と呼ばれる薬剤の組み合わせでマラリアを治療することを推奨している。ピロナリジン・アーテスネートは新規のACTである。現在使用されているACTに耐性を持つようになったマラリアを治療するため、また、マラリアが治療に対してより耐性を持つようになるのを防ぐために、新しいACTが必要とされている。

熱帯熱マラリア原虫によるマラリアに対する有効性を評価するためにピロナリジン・アーテスネートと他のACTを比較し,安全性を評価するためにピロナリジン・アーテスネートおよびピロナリジン単独と他の薬剤を比較検討した。

レビューの主な結果は何か

治療効果の分析には、5件の研究を含めた。アフリカとアジアのすべての年齢の成人と小児を対象に、ピロナリジン-アーテスネートとアルテメテル・ルメファントリンを比較した4件の試験が実施された。アフリカの成人および年長児を対象にピロナリジン・アーテスネートとアーテスネート・アモジアキンを比較した試験と、アフリカおよびアジアの成人および年長児を対象にピロナリジン・アーテスネートとメフロキン・アーテスネートを比較した試験がそれぞれ1件ずつある。また、薬物の安全性については、別の5件の研究を解析に含めた。

ピロナリジン-アーテスネートは、合併症のない熱帯性マラリア原虫 によるマラリアを効果的に治療し、既存のACTと少なくとも同程度かそれ以上の効果が期待できる(低~中等度の確実性のあるエビデンス)。ピロナリジン-アーテスネートは、軽度の肝障害を示唆する血液検査を受けるリスクを高める(中等度~高度のエビデンス)。そのような肝障害が重篤である、あるいは回復不能であるというエビデンスは見つからなかった。ピロナリジン-アーテスネートがすでに肝障害を持つ人にどのような影響を与えるかはわかっていない。

その結果、12歳以下の子供だけを対象とした2件の試験が見つかり、合計732人が参加した。これらの試験のデータのみを含めると、ピロナリジン-アーテスネートとアルテメテル・ルメファントリンとの間で、治療効果や安全性に差は認められなかった。

さらに、ピロナリジンの安全性に関する観察データを提供する7件の研究を特定した。これらの試験から得られたデータにより、安全性を評価する母集団を増やすことができた。観察データでは、重要な副作用の過剰な発現を示唆しなかった。

本レビューの更新状況

2021年10月27日までに報告された研究を検索した。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、冨成麻帆 [2022.07.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD006404.pub4》

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