脊髄性筋萎縮症Ⅰ型に対する薬物治療

本レビューの目的

このコクランレビューの目的は、脊髄性筋萎縮症(SMA)I型に対する薬物治療の効果と有害事象を、治療開始後1年以内における、死亡時年齢または人工呼吸器の使用、および運動マイルストーン(寝返る、座る、立つなど)の観点から検討することであった。

要点

ヌシネルセンは小児のSMAⅠ型における無換気生存率と全生存率を増加させる可能性があり、乳児の運動マイルストーン達成率を改善する可能性がある。有害事象や重篤な有害事象は、おそらく疑似の処置に比べてヌイシネルセン注射の方が少ないと考えられる。

リルゾールがSMAⅠ型に効果があるかどうかは、利用可能なエビデンスが限られているため不明である。

本レビューからわかったこと

SMAは小児期や思春期に発症し、筋力低下につながる障害である。SMAⅠ型は、Werdnig-Hoffman病としても知られており、生後6ヶ月前に発症する最も重篤なSMAである。治療を受けていないSMAⅠ型の小児は、2歳になる前に、支えなしで座ることができなくなり、一般的には死亡するか、呼吸不全を発症し、非侵襲的な人工呼吸が必要になる。

前のバージョンのレビューでは、SMAⅠ型を遅らせたり治したりする治療法は知られていなかった。私たちは新たに得られたエビデンスを含めたレビューをアップデートした。

コクランレビューの著者は、関連する研究を収集し、2つの試験を見つけた。両2つの研究は製薬会社からの資金提供を受けていた。1つの試験では、SMAⅠ型の乳児121人を対象に、脊柱管内に注射して投与するアンチセンスオリゴヌクレオチド薬であるヌシネルセンが研究された。研究者らは、対照群の疑似の処置とヌシネルセンの効果を比較した。1つの試験は、結果としてヌシネルセンが乳児の運動マイルストーン達成率を改善したことを示したため、早期に中止された。もう1つ試験では、プラセボとリルゾールと比較しており、SMAⅠ型の乳児10人が参加した。製薬会社が資金提供を取りやめたため、早期に中止された。

レビューの主な結果

一部の参加者が予定されていたフォローアップを完了する前に試験が中止されたため、同じフォローアップの時期に全ての結果が報告されたわけではない。ヌシネルセンは、死亡または人工呼吸器の使用(補助呼吸)への進行のリスクを対照群と比較して47%減少させた可能性がある。また、運動機能の客観的な臨床評価で反応が認められた小児の割合は、疑似の処置群よりもヌシネルセン投与群の方が高かったことが中程度に確実である(Hammersmith Infant Neurological Examination-Section 2(HINE-2)では51%対0%、Children's Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorders(CHOP INTEND)では71%対3%であった)というエビデンスもある。ヌシネルセンで治療された乳児は、おそらく発達のマイルストーンに到達する可能性も高い。治療を受けた73人の乳児のうち16人が頭部のコントロールができるようになり、6人が一人で座ることができるようになり、7人が寝返ることができるようになり、1人が立つことができるようになった。一方、対照群の37人の乳児は、これらのマイルストーンのいずれも達成できなかった。

有害事象が発生した乳児の数は、おそらくヌシネルセン投与群と対照群ではほとんど差がなく、大多数が有害事象を経験した。重篤な有害事象は、疑似の処置を行った場合と比較して、ヌシネルセンを用いた場合の方が多かった可能性がある。

1つの研究では、SMAⅠ型の小児10人を対象にリルゾールを用いた治療とプラセボ(同一の治療法ではあるが、無効な治療法)を用いた治療を比較したが、エビデンスの確実性は非常に低かった。この試験では、プラセボ群では3人の小児が全員、リルゾール群では7人の子供のうち4人が試験後12ヶ月以内に死亡した。リルゾールで治療された7人の小児のうち3人は、30、48、64ヵ月の時点で生存していた。リルゾール群とプラセボ群では、座ることが出来るようになった児はいなかった。SMAⅠ型の小児におけるリルゾールの効果は、その規模が小さく、制限が厳しいため、エビデンスからは確認も除外もできない。

本レビューの更新状況

2018年10月までに報告された研究を検索した。

訳注: 

《実施組織》 冨成麻帆、堀本佳誉 翻訳[2021.1.6]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD006281.pub5》

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