口腔癌と口腔咽頭癌に対する外科治療

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レビューの論点

口腔癌(口のがん)と口腔咽頭癌(喉のがん)の人々にとって、外科治療が長期間生存(全生存)、症状なしの長期間生存(無病生存)、癌の再発や転移を経験しない結果をもたらす可能性が最も高いことを調べるために、外科治療の臨床試験を評価した。また、さまざまな治療法が病気の症状、生活の質、入院期間、合併症、副作用、コストにどのように影響するかも調べる必要があった。

背景

口腔癌は世界中でもっともよくみられる癌の1つで、2012年には40万人以上の新しい病気が診断されている。これらの癌の治療は、手術、抗癌剤治療、放射線療法、またはこれらの2つ、あるいは3つすべての治療の組み合わせで行われる。この話題の分野は、2014年に口腔外科の専門家ワーキンググループによって優先事項として確認された。コクランオーラルヘルスの著者らは、このレビューを実施した。これは、もともと2007年に公開され、2011年に最初に更新されたアップデートレビューである。このエビデンスは2017年12月20日現在のものである。

研究の特徴

口腔癌の外科治療の成功を調査した12件の試験(今回の更新で新たに5件)を組み入れた。研究には2300人が参加し、そのうち2148人は口腔癌だった。試験は7つの異なる治療選択肢を比較対照としていた。原発癌の切除について、異なる手術方法を比較した試験はなかった。

重要な結果

これらの研究の知見はさまざまで、口腔癌と口腔咽頭癌に対する最適な手術方法について、確固たる結論を導き出すのは不可能である。

結果を統合した2つの研究で、(原発の)癌の切除と同時に行われる、転移がないと思われる頸部(首)リンパ節の(予防的な)切除は、より長期の生存期間には関連していないようだった。しかし別の研究は、全生存と無病生存(疾患の徴候や症状のない一次治療後の時間の長さ)の点では、早期の頸部手術による恩恵があるかもしれないことを示していた。ある研究は、(首の)早期の手術で同じ場所あるいはその周辺での癌の再発は、おそらく低いだろうと結論している。一方、3つの他の研究はいずれの治療も支持していなかった。

病気に冒されたリンパ節の選択的な切除と比較して、頸部リンパ節のすべての切除は長期の生存をもたらすというエビデンスはなかった。

ある研究は、抗癌剤と放射線の併用治療後に、頸部郭清術(首のリンパ節の切除手術)についての決定を導くために行われた特別な精密検査(陽電子放射断層撮影法(PET-CT))を評価し、併用治療の前後に行われた計画的な頸部郭清術と比較して、死亡率(死)に違いはなかったと判定していた。

研究では他にも多くの手術方法の比較があったが、このレビューではその結果を使用できなかった。

頸部リンパ節の切除は、外見や、食べること、飲みこむこと、話すことなどの機能に対する重大な負の影響に関連することが知られているが、研究はこれらの副作用についての報告は不十分で、生活の質については、分析に組み込むのに確実に十分、あるいは十分に多くの数は測定されていなかった。

エビデンスの確実性

エビデンスの確実性は、各比較のための研究が少ないこと、またデザインの方法によるバイアスのリスクの危険にさらされていたことから、非常に低かった。いくつかの比較とアウトカムには、利用可能な結果を欠いていた。

訳注: 

《実施組織》足立雅利 翻訳、藤原崇志 監訳[2019.08.04] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD006205》