認知症の女性の認知機能を維持するためのホルモン補充療法

著者の結論: 

現時点では、認知改善または維持のためのHRTもERTもAD女性に対して適応とならない。

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背景: 

エストロゲンには中枢神経系に対して有益と思われるいくつかの効果があることが示されているため、エストロゲン補充療法(ERT)を用いて閉経後女性に高レベルのエストロゲンを維持すれば、アルツハイマー病(AD)やその他の認知症症候群の女性に対して認知衰退を予防できるかもしれないという考えは生物学的に理にかなっている。

目的: 

認知症のある閉経後女性を対象に、認知機能に関するランダム化比較試験(RCT)でERT(エストロゲン単独)またはHRT(エストロゲンとプロゲスターゲンの併用)の効果をプラセボと比較し明らかにする。

検索戦略: 

以下の用語を用いて多数の保健医療データベースからの記録を含むCochrane Dementia and Cognitive Improvement Group Specialized Register、コクラン・ライブラリ、EMBASE、MEDLINE、CINAHL、PsycINFOおよびLILACSを2007年11月7日に検索した:ORT、PORT、ERT、HRT, estrogen*(エストロゲン)、oestrogen*(エストロゲン)およびprogesterone*(プロゲステロン)。

選択基準: 

ADやその他のタイプの認知症の閉経後女性を対象に、2週間以上の治療期間にわたって認知機能に対するERTまたはHRTの効果を検討していたすべての二重盲検ランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

選択に明らかに適格でないものを除外するために、検索により見出した参考文献の抄録を2名のレビューア(EHおよびKY)が独立に査読した。2名のレビューアは残った参考文献の全文を検討し、対象とする研究を独自に選択した。結果として得られたリストの不一致は、研究の最終リストの選択に至るために、レビューア全員で議論し解決した。選択基準に基づいて、選択した研究の盲検化およびランダム化が適切になるようにした。2名のレビューアは選択した試験のその他の点についての質も評価した。1名のレビューア(EH)が研究からデータを抽出したが、それにはコクランからのJBの助けとチェックを受けた。

主な結果: 

AD女性351例を対象とした計7件の試験を解析した。研究ごとに異なる薬剤が使用されていたため、いずれの解析でも3件以上の研究を統合することはできなかった。臨床的総合評価を行うと、臨床医による12ヵ月後のClinical Dementia Ratingによるスコアは、プラセボ群に比して、結合型ウマエストロゲン(CEE)投与患者で有意に不良であった(全体での重み付き平均差(WMD)=0.35、95%CI=0.01~0.69、z=1.99、P<0.05)。CEE投与患者は1ヵ月後のParagraph Testで遅延再生の成績がプラセボ群の患者よりも悪かった(全体でのWMD=-0.45、95%CI=-0.79~-0.11、z=2.60、P<0.01)。CEE投与患者は12ヵ月後のFinger Tappingの成績も悪かった(WMD=-3.90、95%CI=-7.85~0.05、z=1.93、P<0.05)。低用量のCEE(0.625mg/日)に対しては限定的ながら効果が認められ、2ヵ月時点で評価した際にのみMMSEスコアに有意な改善が認められたが、多重検定による補正すると消失した。より長期のエンドポイント(3ヵ月間、6ヵ月間、12ヵ月間の治療)でMMSEに対する有意な効果は認められなかった。用量1.25mg/日のCEEでは、1ヵ月時点でのTrial-Making test B、4ヵ月の時点でのDigit Span backwardに対して短期的に有意な効果が認められた。2ヵ月にわたるジエストラジオール(E2)の経皮的投与後に、単語再生検査できわめて有意な効果が認められた(WMD=6.50、95%CI=4.04~8.96、z=5.19、P<0.0001)。その他測定したアウトカムについては、有意な効果は認められなかった。

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