変形性関節炎治療における電磁場療法

レビューの論点

本レビューでは変形性関節炎に対する電磁場の効果を対象とした。636例を対象とした9件の研究を見出した。

背景:変形性関節炎や電磁場とは何か?

変形性関節炎はもっともよくみられる関節炎で、手、腰、肩、および膝に影響がみられることがある。変形性関節炎では、骨の両端を保護する軟骨が崩壊し、痛みや腫れを引き起こす。

電磁場は物を磁石に引きつける目に見えない力である。この目に見えない引力は電流を使って発生させることができ、関節周囲の軟骨に作用する可能性がある。変形性関節炎において、電磁場は電流を用いる療法の一種であり、関節周囲の皮膚に当てる。小型の機械やマットを使用して、全身または関節に電磁場を照射する。本療法は医師や理学療法士が実施することもあるが、自宅で機械を使って行うこともできる。

研究の特性

2013年10月までの関連性のあるあらゆる研究を検索し、変形性関節炎の成人636例を対象として、4~26週間にわたり、シャム治療(偽治療)と比較して電磁場療法の効果を調査した9件の研究を見出した。

主な結果

痛み(0~100点;点数が高いほど痛みが強いまたは激しい)

-電磁場はおそらく変形性関節炎の痛みを和らげると考えられる。

-電磁場療法を受けた人では、偽の治療を受けた人と比較して15点分多く痛みが緩和した(15%の改善)。

-電磁場療法を受けた人では、痛みの評価が26点(スケール:0-100)低くなった。

-偽の治療を受けた人では、痛みの評価が11点(スケール:0-100)低くなった。

身体機能

-電磁場は身体機能を改善する可能性があるが、偶然起きる場合もある。

総合的な健康とウェルビーイング(幸福)

-電磁場は、おそらく総合的な健康とウェルビーイング(幸福)に影響を与えない。

副作用

-おそらく、電磁場が副作用を与えたり、副作用で本療法を中止したりすることはないと考えられるが、こうしたことが偶然起きる場合もある。

副作用や合併症に関する正確な情報はない。特に、まれではあるが重篤な副作用に関する情報がない。起こりうる副作用は皮膚発疹と痛みの悪化である。

X線の変化

電磁場による変形性関節炎の改善がX線で認められるかについては、情報が得られなかった。

エビデンスの質

-電磁場は、おそらく痛みを改善し、総合的な健康とウェルビーイング(幸福)や、副作用には影響を与えないと考えられる。この見解はさらなる研究によって変わることもある。

-電磁場は身体機能を改善する可能性がある。この見解はさらなる研究によって変わる可能性が非常に高い。

著者の結論: 

現在のエビデンスでは、電磁場療法が変形性関節炎における疼痛緩和に中等度の効果をもたらす可能性があることを示唆している。本療法が身体機能とQOLに関して臨床的に重要効果をもたらすのかを裏付けるには、さらなる研究が必要である。2002年に実施した前回のレビューから変化はないと結論づける。

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背景: 

本システマティック・レビューは2002年発表のレビューの更新である。変形性関節炎は滑膜関節に影響を与える疾患で、硝子軟骨および軟骨下骨に変成や崩壊を引き起こす。電磁場療法は、現在では理学療法士によって行われており、骨および軟骨の成長や修復を促進する可能性がある。これは、ウォルフの法則、圧電効果、および流動電位の概念などの物理学の原則に基づいている。

目的: 

変形性関節炎の治療に対する電磁場の有効性および有害性を、プラセボまたはシャムと比較して評価すること。

検索方法: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ 2013年9号)、PreMEDLINE(1966年以前に発表された試験)、MEDLINE(1966年~2013年10月)、CINAHLおよびPEDro(2013年10月まで)を検索した。電子検索を補うためハンドサーチによる検索も行った。

選択基準: 

変形性関節炎に対する電磁場について調べたランダム化比較試験(RCT)で、治療期間が4週間以上のもの。あらゆる言語の論文を対象とした。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が独立して本レビューで扱った研究を評価し、意見の相違については3人目の著者との合意により解決した。事前に開発したデータ抽出フォームを用いて、データを抽出した。同じレビュー著者らが、コクランのバイアスのリスクツールを用いて、試験バイアスのリスクを独立して評価した。Rheumatology Clinical Trials(OMERACT)ガイドラインのアウトカム指標に基づき、変形性関節炎に関するアウトカムを出版物から入手した。連続的なアウトカム指標の結果を、95%信頼区間(CI)を伴う平均差(MD)または標準化平均差(SMD)として表した。リスク比(RR)を用いて二値アウトカム指標を統合し、治療必要数(NNT)を算出した。

主な結果: 

合計636例の変形性関節炎を伴う参加者を対象とした9件の研究を選択し、このうち6件を本レビューの更新に追記した。研究のデザインと実施に関する報告が不十分であるため、全9件の研究で選択的なアウトカム報告が不明であった。また、3件の研究ではアウトカムデータが不完全であるため、バイアスのリスクが高かった。その他の分野に関して、9件の研究の総バイアスのリスクは低かった。

4~26週間の治療後に、0~100点で疼痛を評価したところ、プラセボ群と比較して電磁場療法にランダム化された参加者では、15.10点分多く疼痛緩和がみられた(MD 15.10、95% CI 9.08~21.13;絶対改善度15%)。12~26週間の治療後に、Western Ontario and McMaster Universities osteoarthritis index(WOMAC)を用いて0~100点で身体機能を評価したところ、電磁場療法は統計学的に有意な効果を示さなかった(MD 4.55、 95% CI -2.23~11.32;絶対改善度4.55%)。また、4~6週間の治療後に、SF-36を用いて0~100点でQOLを評価したところ、統計学的な有意はみられなかった(SMD 0.09、 95% CI -0.36~0.54;絶対改善度0.09%)。X線像の変化の解析に利用できるデータはなかった。288例に上る参加者を対象にした4件の試験で安全性を評価した。4~12週間の治療後で、プラセボと比較して有害事象の発生にはなかった(RR 1.17、95% CI 0.72~1.92)。4週間の治療後で、有害事象により試験を中止した参加者数(1件の試験で測定)にはなかった(RR 0.90、95% CI 0.06~13.92)。重篤な有害事象を発現した参加者はいなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.29]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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