女性尿失禁に対する開腹恥骨後式腟断端固定術

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腹圧性尿失禁とは、咳をする、笑う、くしゃみをする、運動する場合に尿が漏れることをさす。これは、膀胱を保持する筋肉と靭帯が変化することにより起こる。筋力強化訓練は有用であるが、尿失禁を改善し問題をなくす外科的手技がある。開腹恥骨後式腟断端固定術は、膀胱と尿道の結合部周囲組織を挙上させる手術である。試験についての本レビューでは、女性の腹圧性および混合性尿失禁に対し本手術が有効な外科的手技で、これにより大半の女性で長期の治癒が得られることを認めた。新しい手技、特にスリング手術[tension-free vaginal tape(TVT)術など]および腹腔鏡下腟断端固定術は有望であると考えられるが、特に長期的予後についてさらなる研究が必要である。

著者の結論: 

特に長期において、開腹恥骨後式腟断端固定術は腹圧性尿失禁に対する有効な治療法である。治療1年以内では、総制御率は約85%~90%である。5年後は約70%の制御率である。tension-free vaginal tape(TVT)などの低侵襲性の新しい手技は開腹腟断端固定術に比べて有望であると思われるが、長期の予後は不明でその有害事象について慎重に監視する必要がある。腹腔鏡下腟断端固定術により回復は迅速となるが、相対的安全性および長期有効性はまだ不明である。

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背景: 

尿失禁はよくみられ、患者にとって悩ましい問題である。開腹恥骨後式腟断端固定術は、膀胱頸部近傍組織と恥骨前面の後部領域の近位尿道を持ち上げ、不完全な尿道閉鎖を修正する外科的処置である。

目的: 

尿失禁治療に対する開腹恥骨後式腟断端固定術の効果を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)から同定した試験を含むCochrane Incontinence Group Specialised Register (2012年3月13日検索)、MEDLINE、CINAHL、雑誌と学会議事録のハンドサーチ、関連性のある論文の参考文献リストを検索した。その他の研究を同定するため研究者に連絡を取った。

選択基準: 

腹圧性または混合性尿失禁の症状または尿流動態学的診断を有する女性を対象にしたランダム化または準ランダム化比較試験で、試験の1群以上に開腹恥骨後式腟断端固定術を含むもの。

データ収集と分析: 

研究を方法論的質またはバイアス感度について評価し、2名のレビューアが抽出したデータと選択についての適切性についても評価した。試験データを介入別に解析した。適宜、要約統計量を算出した。

主な結果: 

計5,244名の女性を対象とした53件の試験を本レビューに選択した。 開腹恥骨後式腟断端固定術の総治癒率は68.9%~88.0%であった。2件の小規模研究では、保存的治療に比べて、開腹恥骨後式腟断端固定術後の尿失禁率の方が低いと示唆された。同様に1件の試験では、抗コリン作動薬投与に比べて開腹恥骨後式腟断端固定術後の尿失禁率の方が低かった。6件の試験からのエビデンスでは、前腟形成術後に比べて開腹恥骨後式腟断端固定術後の尿失禁率が低かったと示された。その利益は経時的に維持された[失禁に対するリスク比(RR)0.51、95%CI 0.34~0.76(最初の1年以内);RR 0.43、95%CI 0.32~0.57(1~5年目);RR 0.49、95%CI 0.32~0.75(5年以降)]。 尿道下スリング(trans-vaginal tapeまたはtransobturator tape)との比較の20件の試験からのエビデンスでは、評価した全期間で失禁率に有意を認めなかった。 針式膀胱頸部挙上術に比べ、腟断端固定術後1年以内(RR 0.66、95%CI 0.42~1.03)、1年後(RR 0.48、95%CI 0.33~0.71)、5年目以降(RR 0.32、95%CI 15~0.71)の失禁率は低かった。 短期、中期、長期追跡時の患者報告による失禁率は、開腹式と腹腔鏡下の恥骨後腟断端固定術とで有意を示さなかったが、信頼区間の幅は広かった。2件の試験では、1~5年の追跡時、Marshall Marchetti Krantz手技後よりもBurch手技後の方が失禁が少なかった(RR 0.38、95%CI 0.18~0.76)。他の追跡時点でのデータはほとんどなかった。 全般的に、得られたエビデンスでは他の開腹術に比べ開腹恥骨後式腟断端固定術による罹病率および合併症率は高くなかったが、前腟形成術およびスリング法に比べて骨盤内臓器脱がよくみられた。

訳注: 

監  訳: 林 啓一,2012.10.31

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

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