前立腺肥大症に対する ノコギリヤシ(Serenoa repens)

レビューの論点

Serenoa repens(ノコギリヤシ)単独あるいは他の植物治療剤との併用は、前立腺肥大症の男性の症状を改善するか?

背景

前立腺が肥大すると、日中や夜間に頻繁に尿意をもよおしたり、尿の出が悪くなったり、残尿感があるなど、煩わしい尿路症状が現れることがあるかもしれない。一般的な薬剤を用いた介入のほかに、植物やハーブの使用(植物療法)は一般的であり、多くの西洋諸国で徐々に増えてきている。アメリカノコギリヤシ(矮性椰子)(American saw palmetto、dwarf palm plant)、Serenoa repens(ノコギリヤシ)(植物学名Sabal serrulatumとしても知られている)の抽出物(エキス)は、この症状の治療に利用されているいくつかの植物治療薬のひとつである。

研究の特性

ノコギリヤシ単独または他のハーブ製品との併用とプラセボ(実際には治療を受けていないが、治療を受けたと参加者に思い込ませる方法)を比較した男性4,656例を対象とした27件の研究を同定した。ほとんどの研究は、中程度の症状を有する50歳以上の男性を対象としていた。10件の研究は製薬企業から資金提供を受け、2件の研究は政府から資金提供を受けていた。残りの研究は資金供給元に関する報告がなかった。

主要な結果

最も信憑性の高い研究によると、ノコギリヤシ単独は、3~6カ月後の尿路症状や生活の質(Quality of Life:QOL)においてプラセボとの差はほとんどない。この治療法は有害事象とも関連がないと思われる。結果は12~17カ月でも同様であった。

ノコギリヤシと他のハーブ製品との併用は、尿路症状においてほとんど差がないかもしれないが、QOLや有害事象への影響についてはより不明な点が多い。

このレビューの結果は2022年9月16日までのものである。

エビデンスの確実性

科学的根拠(エビデンス)の確実性は、ノコギリヤシ単独では主に高い、または中程度であるが、ノコギリヤシと他のハーブ製品との併用では低く、結果に対する信頼度は、高い、中等度、または低いのいずれかとなる。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2023.10.31] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD001423.pub4】

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