潰瘍性大腸炎の寛解維持のためのアザチオプリン及び6‐メルカプトプリン

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潰瘍性大腸炎に対する維持療法のためのアザチオプリン及び6‐メルカプトプリン投与に関する試験 6件の試験をレビューし、最良のエビデンスが得られた。試験の質は大半が不良であった。試験では18歳以上の潰瘍性大腸炎患者286名を検討した。被験者は、経口アザチオプリン又は6‐メルカプトプリン、プラセボ(偽薬)の投与又は標準維持療法(メサラジン又はスルファサラジン)を受けた。試験は12ヵ月間以上継続した。 潰瘍性大腸炎とはいかなる病気で、アザチオプリン及び6‐メルカプトプリンは有効か 潰瘍性大腸炎は、大腸の慢性炎症疾患である。潰瘍性大腸炎の最も一般的な症状は、出血性下痢及び腹痛である。アザチオプリン及び6‐メルカプトプリンは、免疫系を抑制することにより炎症を低減すると思われる。 試験で明らかになったことは何か 試験により、維持療法(患者が治療に奏功後、疾患が再発しないよう予防する治療)においてアザチオプリンはプラセボより良好であることが示された。プラセボ投与患者の35%に比し、アザチオプリン投与患者の56%が投与1年後に無再発状態であった。 アザチオプリン及び6‐メルカプトプリンの安全性はどうか 上記薬剤の忍容性は一般に高く、副作用はまれである。しかし、急性膵炎(膵臓の炎症で重度腹痛を引き起こす‐2%のリスク)及び骨髄抑制(正常血球が産生されない‐4%のリスク)など重篤な副作用が生じる場合がある。上記薬剤服用の患者は、有効性のエビデンス及び副作用について定期的にモニタリングが必要である。 結論は 潰瘍性大腸炎の寛解維持のためのアミノサリチル酸(メサラジン又はスルファサラジン)の有効性及び安全性は確立しているため、アザチオプリン及び6‐メルカプトプリンは本疾患の再発予防の一次治療として推奨することはできない。しかしアザチオプリンは、メサラジン又はスルファサラジン投与に失敗又は忍容性がなかった患者及びステロイドの反復投与を必要とする患者の維持療法に有効と思われる。

著者の結論: 

アザチオプリン投与は、潰瘍性大腸炎の寛解維持においてプラセボより有効と思われた。アザチオプリン又は6‐メルカプトプリンは、メサラジン又はスルファサラジン投与失敗あるいは忍容性のない患者、及びステロイドの反復投与を必要とする患者の維持療法に有効と思われる。特にアザチオプリンの有害事象の可能性の点から、標準維持療法に対する優越性を評価するさらなる研究が必要である。本レビューは、コクラン・ライブラリ(2007年第1号)に発表された潰瘍性大腸炎の寛解維持のためのアザチオプリン及び6‐メルカプトプリン投与に関する既存のレビューを更新したものである。

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背景: 

炎症性大腸疾患において寛解維持は主要な問題である。潰瘍性大腸炎において、寛解維持のためのアザチオプリン及び6‐メルカプトプリン投与の有効性のエビデンスは依然として異論がある。

目的: 

潰瘍性大腸炎の寛解維持のためのアザチオプリン及び6‐メルカプトプリン投与の有効性及び安全性を評価する。

検索戦略: 

2012年6月までのMEDLINE、EMBASE及びコクラン・ライブラリのデータベースを検索した。上記論文の参考文献リスト及びレビュー論文並びに、主要な消化管に関する会議議事録についてもハンドサーチした。維持試験の著者に、未発表の試験に関する質問を行った。

選択基準: 

アザチオプリン又は6‐メルカプトプリンをプラセボ又は標準維持療法(メサラジンなど)と比較する12ヵ月間以上のランダム化比較試験を組み入れた。

データ収集と分析: 

レビューア2名が別々に、標準用紙を用いてデータを抽出した。不合意事項は、第三のレビューアを含めたコンセンサスを得て解決した。試験の質は、Cochraneのバイアスのリスクツールを用いて評価した。主要アウトカムは、臨床又は内視鏡による寛解維持失敗であった。副次アウトカムには、有害事象及び有害事象による試験中止が含まれた。対照群の種類(プラセボ又は実薬対照)毎に別々に解析を実施した。異質性が認められない場合、固定効果モデルに基づき、統合リスク比を算定した。GRADEアプローチを用いて、統合アウトカムのエビデンスの全品質を評価した。

主な結果: 

潰瘍性大腸炎患者286名を対象とする6件の試験がレビューに組み入れられた。3件の試験で盲検性が保たれず、バイアスのリスクが高かった。アザチオプリンは、寛解維持においてプラセボより有意に優れていた。プラセボ患者の65%(76/117)に対し、アザチオプリン投与患者の44%(51/115)が寛解維持に失敗した(4件の試験、患者232名、RR 0.68、95%CI 0.54~0.86)。GRADE解析では、上記アウトカムのエビデンスの全品質が、バイアスのリスク及び不正確さ(疎データ)のため低値を示した。6‐メルカプトプリンとメサラジン、アザチオプリンおよびスルファサラジンとを比較した2件の試験では、有意な異質性が認められたため、プールされなかった。メサラジン投与患者の100%(8/8)に対し、6‐メルカプトプリン投与患者の50%(7/14) が寛解維持に失敗した(1件の試験、患者22名、RR 0.53、95%CI 0.31~0.90)。スルファサラジン投与患者の38%(5/13)に対し、アザチオプリン投与患者の58%(7/12)が寛解維持に失敗した(1件の試験、患者25名、RR 1.52、95%CI 0.66~3.50)。1件の小規模試験では、6‐メルカプトプリン投与の寛解維持はメトトレキサートより優れた結果を示した。本試験では、6‐メルカプトプリン投与患者の50%(7/14)及びメトトレキサート投与患者の92%(11/12)が寛解維持に失敗した(1件の試験、患者26名、RR 0.55、95%CI 0.31~0.95)。実薬対照を用いた試験はいずれもオープンラベル試験であった。有害事象評価のためプラセボ及び実薬対照による試験をプールしたところ、有害事象発現率はアザチオプリンと対照薬間に有意差を認めなかった。アザチオプリン投与患者の9%(11/127)が1つ以上の有害事象を経験したのに対し、プラセボ患者では2%(3/130)であった(5件の試験、患者257名、RR 2.82、95%CI 0.99~8.01)。アザチオプリン投与患者は有害事象のための試験中止のリスクが有意に増大した。対照患者の0%(0/98)に対し、アザチオプリン投与患者の8%(8/101) が有害事象のため試験を中止した(5件の試験、患者199名、RR 5.43、95%CI 1.02~28.75)。試験投与関連の有害事象には、急性膵炎(3例)及び重大な骨髄抑制(5例)が含まれた。死亡、日和見感染又は新生物の報告はなかった。