集団的リーダーシップは医療従事者の行動、患者の健康、および職員の幸福度を向上させるか?

要点

集団的リーダーシップには、複数の医療従事者が観点や知識を共有することが含まれる。利用可能なエビデンスからは、集団的リーダーシップにより、医療従事者の行動、患者の健康、または職員の幸福度に大きな違いをもたらされるかどうかについての確信性は得られなかった。また、研究の結果に対する信頼性は、「中等度」から「非常に低い」であり、研究の質が低く、数も少なかったために大きく制限されていた。

何を調べたかったのか?

本レビューの目的は、集権的で階層的なリーダーシップとは対照的な、集団的リーダーシップの経験が、医療従事者としての専門的な行動、患者の医療、職員の幸福度を向上させるかどうかを調査することである。そのために、集団的リーダーシップと集権的リーダーシップを比較した研究について検索が行われた。

何を行ったのか?

医療従事者間での共同意思決定と意思疎通を特徴とする集団的リーダーシップの介入に関連したすべての研究について検索し、解析を行った。

何が見つかったのか?

合計955人の参加者を対象とした、3件の研究が見つかった。これらの研究は、カナダ、イラン、米国の病院で実施されていた。集団的リーダーシップの介入は、リーダーシップを改善し(合計955人の参加者を対象とした3件の研究より)、加えてチームワークを改善し、仕事に関するストレスをわずかに減少させる(164人の参加者を対象とした1件の研究より)可能性が示唆された。また、集団的リーダーシップが、臨床成績、入院患者の死亡、職員の欠勤に対し影響を及ぼすかどうかは不明であった(60人の参加者を対象とした1件の研究より)。

エビデンスの限界は何か?

集団的リーダーシップが医療現場におけるリーダーシップを向上させることについての確信性は「中等度」と判断した。そのエビデンスでは、集団的リーダーシップがリーダーシップ戦略に大きな影響を与える可能性が示唆されていた。しかし、チームワークおよび仕事上のストレスに関する結果ついては、確信性が得られなかった。また、臨床成績、入院患者の死亡、職員の欠勤に関連するエビデンスについても確信性が得られなかった。研究参加者はそれぞれどのような介入を受けているかについて認識していた可能性がある。また、すべての研究において、目的とするすべての情報が得られたわけではなく、得られたエビデンスは少数の症例に基づくものであった。

このレビューはいつのものか?

2021年1月までに発表された研究の検索に基づくものである。

訳注: 

《実施組織》小泉悠、杉山伸子 翻訳[2022.11.09]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013850.pub2》

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