分層黄斑円孔に対する手術の有効性

なぜこの問題が重要なのか?
分層黄斑円孔とは、網膜の中心の黄斑と呼ばれるところに小さな欠損ができて膜が薄くなったものである。網膜は目の奥で光を感知する層で、黄斑はものを細かく見分けるのに欠かせない。分層黄斑円孔では、手術により視力の低下を防げる(または視力を改善できる)とする向きもあるが、今のところコンセンサスは得られていない。本レビューの対象となったのは、分層黄斑円孔の患者の視力を手術により改善できるか判断するために行われた公表済みの研究である。

どのようにエビデンスを特定し、評価したか?
まず、ランダム化比較試験(患者を2つかそれ以上の治療グループのいずれかに無作為に割り付けて行う臨床研究)を検索した。なぜなら、治療の効果について最も確かなエビデンスが得られるのは、こうした研究だからである。その後、結果を比較し、各研究から得られるエビデンスを要約する計画だった。そして最後に、研究方法、規模、またさまざまな研究の結果がどの程度似ているかなどの要因に基づいて、エビデンスの信頼性を評価することを目指した。

レビューの結果
検索の結果、見つかったのは、分層黄斑円孔と診断された合計36人の患者を含む研究1件だった。この研究では、手術を受けずに経過を観察した人に比べて、手術を受けた人は6か月後に視力が改善する可能性があることが示された。とはいえ、研究のデザインに限界があり、規模が小さいことから、エビデンスの信頼性は低いと思われる。

この結果が意味すること
手術が分層黄斑円孔の患者に有効であるかは、まだ明らかではない。さらなる研究が必要である。

本レビューの更新状況
本コクラン・レビューのエビデンスは2021年7月20日現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 橋本早苗 翻訳、阪野正大 監訳[2022.03.08]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013678.pub2》

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