COVID-19の診断における胸部画像検査の精度は?

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なぜこの論点が重要か

COVID-19が疑われる者は適切な治療・自己隔離・濃厚接触との連絡を行うため、感染の有無を迅速に知る必要がある。

現在、COVID-19の確定診断には鼻咽頭サンプルの臨床検査(RT-PCR)が必要とされている。RT-PCRは専用の機器を要し、結果が出るまでに少なくとも24時間かかる。RT-PCRの結果は必ずしも正確とは限らず、必要に応じて2回目のRT-PCR検査ないしは別種の検査が行われることもある。

COVID-19は呼吸器疾患である。RT-PCRの結果が出る前あるいは結果が陰性であった場合にCOVID-19様症状を有する患者の診断を目的として、胸部画像検査を行う場合がある。

私たちは何を知りたかったのか

本レビューの目的は、COVID-19様症状を呈する患者の診断において胸部画像検査が実用に足る精度を有しているかどうかを調べることである。本レビューは1回目のアップデートである。本レビューでは解析の対象としてCOVID-19疑いの患者のみとし、確定済みのCOVID-19患者を対象とした研究を解析から除外した。

エビデンスは2020年6月現在のものである。

胸部画像検査とは

レントゲンやCTや超音波などの装置は体内の構造物をスキャンする目的で用いられ、胸部画像検査では胸部の臓器や構造物の画像が得られる。

- レントゲン(X線画像検査)は放射線を利用して2次元の画像を作成する。院内ではたいてい放射線技師が固定装置を使用して撮影するが、ポータブル装置でも撮影可能である。

- CTスキャン(コンピュータ断層撮影)はコンピュータを使用して2次元のX線画像を統合し、3次元画像に変換する。この検査は高度に専門的な装置が必要となるため、専門の放射線技師によって院内で実施される。

- エコー検査は高周波の音波を利用して画像を作成する。エコー検査は病院のみならず、診療所やクリニックなどの医療現場でも実施可能である。

本レビューにおいて実施したこと

COVID-19が疑われる患者を胸部画像診断でCOVID-19と診断する精度を評価している研究を検索した。検索の対象となる研究デザインおよび実施国は限定していない。

わかったこと

9,339例を対象とした34件の研究を同定した。SARS-CoV-2感染有無の確認方法は、すべての研究においてRT-PCR単独またはRT-PCRと別種の検査の併用であった。

ほとんどの研究(31件の研究、8,014例)が胸部CTを、一部の研究(3研究、1,243例)が胸部X線を評価している。肺のエコー検査を評価した研究は1件(100例)のみであった。研究が行われた場所は、アジア19件、ヨーロッパ10件、北米4件、オーストラリア1件であった。参加者は入院患者(24件の研究)および外来患者(4件の研究)であったが、6件の研究では参加者の背景情報が不明であった。

ある種の検査に関して4件以上の研究が評価を下している場合、それらの研究結果をまとめ、統合して分析することとした。

胸部CT

統合結果によると、胸部CTによりCOVID-19罹患者の89.9%が正しく診断された。一方で、COVID-19非罹患者の38%が誤診されている。

胸部X線

胸部X線によりCOVID-19罹患者の57%〜89%が正しく診断された。一方で、COVID-19非罹患者の11%〜89%が誤診されている。

肺エコー検査

肺エコー検査によりCOVID-19罹患者の96%が正しく診断された。一方で、COVID-19非罹患者の38%が誤診されている。

結果の信頼性

研究により結果はまちまちであり、研究結果の報告方法も様々であった。解析対象として組み入れられた研究の25%はプレプリントとして発表されたものであり、査読済み論文のような厳密なチェックは受けていない。したがって、本レビューの著者らは今回解析の対象とした研究の結果をもとに、確信を持って結論を出すことができなかった。

結論

胸部CTはCOVID-19の他の呼吸器疾患との区別よりも、COVID-19の除外診断に有用であることが示唆された。したがって、胸部CTの有用性はCOVID-19の除外診断に限られ、他の呼吸器感染症との鑑別の際は有用ではない可能性がある。

胸部CTの精度が初回レビュー時から向上したことの理由として、放射線科医らが従来のものより優れた陽性基準を採用していることが挙げられるだろう。加えて、COVID-19のパンデミックの段階が遷移したことも一因であろう。初期段階で得た知識や経験をもとに、その後の研究が行われているからである。

本レビューは新たなエビデンスが得られ次第、継続的に更新していく。今後行われるであろう研究においては、陽性検査とは何かを事前に定義し、同一グループ内で異なる種類の画像検査を用いて結果を比較していくことが望まれる。

訳注: 

《実施組織》森岡敬一朗 翻訳、井村春樹 監訳[2021.02.02]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013639.pub3》