インフリキシマブによる活動期のクローン病に対する治療

要点

- インフリキシマブとプリンアナログ製剤(アザチオプリンまたは6-メルカプトプリン)の併用は、クローン病の寛解(症状のない状態)を達成するにあたりプリンアナログ製剤単独よりも効果的であり、症状の改善にも優れている可能性がある。また、この2つの治療法の安全性は同等であると思われる。

- インフリキシマブ単独投与は、プリンアナログ製剤単独投与よりもクローン病の寛解達成と症状の改善に有効である可能性がある。また、この2つの治療法の安全性は同等であると思われる。

- インフリキシマブは、クローン病の寛解達成と症状の改善には、バイオ後続品と同等に有効である可能性がある。また、この2つの治療法の安全性は同等であると思われる。インフリキシマブのバイオ後続品とは、インフリキシマブの先発品と非常に類似している生物学的製剤(生きた細胞や生物を利用して作られた物質を含む)のことである。

クローン病とは

クローン病とは、腸のあらゆる部分に起こり、生涯続く可能性のある炎症性疾患である。よくみられる症状には、血便、下痢、腹痛、発熱、体重減少、疲労などがある。クローン病の原因は正確にはわかっていないが、遺伝子、免疫系(感染から体を守る働き)の問題、腸内細菌、および何らかの環境因子が絡み合っている可能性が高い。

クローン病の確立した治療法はないが、通常は副腎皮質ステロイド薬や免疫系治療薬などの薬物と、時には手術により症状の管理が行われる。インフリキシマブは、生物学的製剤と呼ばれるクローン病治療薬の一つである。

ほとんどのクローン病患者には、症状がある時期と、症状が抑えられている時期がある。症状がある時期は活動期と呼ばれ、症状が抑えられている時期は寛解期と呼ばれる。

知りたかったこと

クローン病の寛解達成や症状の改善を目的として、インフリキシマブを他の薬剤や偽薬(プラセボ)と比較した場合の差を明らかにしたいと考えた。また、他の薬剤と比較した場合のインフリキシマブの安全性についても知りたかった。

実施したこと

クローン病の成人患者を対象に、インフリキシマブと他の薬物療法を比較したランダム化比較試験(参加者を2つ以上の治療群のいずれかに無作為に割り付けた研究)を検索した。

わかったこと

参加者計1,101人を含む10件の研究が見つかり、それぞれ以下を検討していた:

- インフリキシマブとプラセボとの比較(1件の研究)

- インフリキシマブとプリンアナログ製剤の併用療法とプリンアナログ製剤単独療法との比較(4件の研究)

- インフリキシマブとプリンアナログ製剤(アザチオプリンまたは6-メルカプトプリン)との比較(2件の研究)

- インフリキシマブとバイオ後続品との比較(1件の研究)

- インフリキシマブの異なる用量の比較(2件の研究)

2件の研究では、瘻孔を有するクローン病患者を対象としていた。瘻孔とは、腸と皮膚や膀胱など他の臓器との間に形成される狭いトンネルのことである。

主な結果

インフリキシマブとプリンアナログ製剤(アザチオプリンまたは6-メルカプトプリン)の併用は、治療開始から24~26週間でクローン病の寛解を達成することにおいて、プリンアナログ製剤単独よりも効果的であり、症状の改善にも優れている可能性がある。副作用に関しては、この2つの治療法は類似していると考えられる。

インフリキシマブの単独投与は、治療開始から26週間でクローン病の寛解達成および症状の改善を得ることにおいて、プリンアナログ製剤単独よりも有効である可能性がある。副作用に関しては、この2つの治療法は類似していると考えられる。

インフリキシマブは、治療開始から6週間でクローン病の寛解達成および症状の改善を得ることにおいて、バイオ後続品と同等に有効である可能性がある。副作用に関しては、この2つの治療法は類似していると考えられる。

本レビューで検討した他の治療法との比較については、エビデンスが不足していた。

エビデンスの限界

研究の実施方法に問題があったこと、参加者数が少なかったこと、および結果の報告方法に問題があったことにより、ほとんどのエビデンスは質が低いか、または非常に低かった。

本レビューの更新状況

このレビューは2023年3月4日現在のものである。

訳注: 

《実施組織》小泉悠 、ギボンズ京子 翻訳[2024.10.23]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012623.pub2》

Tools
Information