がん治療中の患者に対する手術前もしくは手術後の運動トレーニング

背景
がんと診断された患者は、治癒を期待して集中的な治療を受けることがよくある。その治療法としては、外科手術、化学療法、化学放射線療法などがあり、併用されることも多い。これらの治療法は副作用(有害事象)として体調が悪い、疲れやすいという感覚を与えたり、生活の質(QOL)の低下を招いたりすることがある。しかし、がんの治療中に運動トレーニングプログラムを受けることで、これらの有害事象を予防したり、少なくとも低減したりできる可能性がある。かつては、がん患者は安静を指示されたものであるが、現在は可能な限り活発に活動することが推奨されている。

レビューの論点
がんの手術を受ける成人患者において、運動トレーニングの有無が体力、安全性、QOL、疲労(倦怠感)、治療の結果にどの程度の影響を与えるか。

主要な結果
2018年10月までに出版された試験11件(参加者計1,067人)を対象とした。患者の大部分(73%)は乳癌治療を受けていた。患者は運動プログラム群または通常ケア群(運動トレーニングなし)に無作為に割り付けられた。対象とした研究では、運動トレーニングによる体力への効果はほとんどないことが示唆された。また、有害事象の数が少ないことから、運動そのものはおそらく安全であることも強調された。さらに、運動トレーニングによるQOLへの効果もほとんどないことが示された一方、疲労(倦怠感)を低減させる効果があるかもしれないことが示された。なお、運動が術後の回復を促進するかどうかについては、その点を報告した試験がなかったため不明である。

エビデンスの質
全体的なエビデンスの質(確実性)は、いずれの結果に関しても中等度から非常に低いものであった。その主な理由は、試験数の少なさ、試験参加者数の少なさのほか、試験デザインの限界がある。

結論
本レビューの知見は、全体としてエビデンスの確実性が低く、がんの種類がさまざまで、治療法、運動介入の内容、結果を評価する指標も多岐にわたることから、その解釈には注意を要する。補助療法(術後の化学療法や放射線療法)の実施中における運動が疲労を低減することについては、中等度の確実性があると考える。

これは新たな研究領域であり、がん治療を受ける患者にとって運動が有益かどうかを理解するためにさらに情報が必要である。今後の試験ではまた、手術前の運動トレーニングが重要かどうかを知るために、手術の前に(術前補助療法と呼ばれる)化学療法または放射線療法を受ける、新たにがんと診断された患者を特に対象とする必要がある。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)橋本仁 翻訳、小杉和博(国立がん研究センター東病院緩和医療科)監訳 [2019.03.08] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012280》

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