特発性パーキンソン病(IPD)患者のリハビリテーション転帰を改善するための非侵襲性脳電気刺激

レビューの論点

特発性パーキンソン病(IPD)患者の運動症状および非運動症状の緩和に対する脳電気刺激の有効性を評価すること。

背景

IPDは神経変性疾患で、通常は経過が長いほど障害の重症度が増す。IPDは患者の健康関連の生活の質、身体障害および機能障害に影響を与える。これらのアウトカムの改善に対する現在のリハビリテーション法の有効性には限界がある。経頭蓋直流電気刺激(tDCS)として知られる技術を用いた非侵襲性脳電気刺激を追加すると、リハビリテーションの効果が増強される可能性がある。この技術は脳の働きを変化させ、IPD患者の健康関連の生活の質、身体障害および機能障害を改善する可能性がある。しかし、リハビリテーション転帰の改善に対するtDCSの有効性は依然として不明である。

検索日

最新の検索日は2016年2月17日である。

試験の特性

参加者数137名の試験6件を組み入れた。対象試験治療期間は、tDCSの単回セッションから連続5セッションまで様々であった。

主な結果

参加者数137名の試験6件の結果から、IPD患者におけるリハビリテーション転帰の向上、すなわちoff time(薬物によって症状がコントロールされていない期間)およびジスキネジアを伴うon time(症状はコントロールされているが、不随意筋運動が認められる期間)の減少ならびに健康関連の生活の質、身体障害および機能障害の改善に対し、tDCSがどの程度の効果を有するかを判断するにはエビデンスが不十分であることが明らかになった。しかし、tDCSはIPD患者の運動機能に関する障害を改善する可能性がある。日常生活動作の改善に対するtDCSの効果を検討した試験はなかった。両群間における有害事象および試験を中断した参加者の割合は同程度だった。

エビデンスの質

すべての知見が極めて質の低いエビデンスに基づいている。したがって、効果の推定の信頼性は極めて低い。推定した効果と真の効果が著しく異なる可能性が高い。

著者の結論: 

IPD患者のoff time(薬物によって症状がコントロールできていない期間)およびジスキネジアを伴うon time(症状はコントロールされているが、不随意筋運動が認められる期間)の減少ならびに健康関連の生活の質の向上、身体障害および機能障害に対するtDCSの効果を判断するのに十分なエビデンスが得られてない。極めて質の低いエビデンスによって、tDCS群と対照群の間で脱落および有害事象がないことが示唆されている。

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背景: 

特発性パーキンソン病(IPD)は神経変性疾患で、通常は経過が長いほど障害が重症化する。IPDは患者の健康関連の生活の質、身体障害および機能障害に影響を与える。現在のリハビリテーション法はIPD患者のアウトカム改善効果が限られているが、皮質の興奮を調節してIPDのアウトカムを改善する経頭蓋直流電気刺激(tDCS)による非侵襲性の脳刺激がリハビリテーションの補助となる可能性がある。

目的: 

IPD患者の運動症状および非運動症状に対するtDCSの有効性を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL; コクラン・ライブラリ; 2016年2号)、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、AMED、Science Citation Index、Physiotherapy Evidence Database (PEDro)、RehabdataおよびInspecをデータベース検索した(2016年2月まで)。既報、未発表および継続中の試験をさらに同定するため、試験レジストリおよび参考文献一覧を検索し、学会抄録集のハンドサーチならびに、試験著者および機器製造者への問合せを行った。

選択基準: 

IPD患者における健康関連の生活の質、身体障害および機能障害の改善に関してtDCSを対照と比較したランダム化比較試験(RCT)およびランダム化比較クロスオーバー試験のみを組み入れた。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ試験の質を評価し(JMおよびMP)、データを抽出した(BEおよびJM)。必要に応じて、試験著者に追加情報を問い合わせた。試験報告書から、脱落者および有害事象に関する情報を収集した。

主な結果: 

参加者計137名の6件の試験を組み入れた。主要アウトカムであるパーキンソン病統一スケール(UPDRS)によって測定した機能障害に対するtDCSの効果を、対照(tDCSの偽治療 )と比較検討した参加者45名の試験を2件同定した。tDCSはUPDRS総合スコアの変化に対して効果が認められないという、極めて質の低いエビデンスが得られた(平均差(MD)-7.10%, 95%信頼区間(CI)-19.18〜4.97; P = 0.25, I² = 21%, ランダム効果モデル)。一方で、介入期終了時にUPDRS パートIIIの運動セクションのスコアに対して効果が認められるというエビデンスが得られた(MD -14.43%, 95% CI -24.68〜-4.18; P = 0.006, I² = 2%, ランダム効果モデル; 極めて質の低いエビデンス)。25名を対象とした1件の試験ではoff timeおよびジスキネジアを伴うon timeの減少を測定したが、有効であるというエビデンスは得られなかった(それぞれMD 0.10時間, 95% CI -0.14〜0.34; P = 0.41, I² = 0%, ランダム効果モデル; およびMD 0.00時間, 95% CI -0.12〜0.12; P = 1, I² = 0%, ランダム効果モデル; 極めて質の低いエビデンス)。

参加者41名の2件の試験では、介入期終了時に歩行時間試験を用いて歩行速度を測定した結果、有効であるというエビデンスは得られなかった(標準化平均差(SMD) 0.50, 95% CI -0.17〜1.18; P = 0.14, I² = 11%, ランダム効果モデル; 極めて質の低いエビデンス)。このほかの副次アウトカムは健康関連の生活の質で、健康関連の生活の質における身体の健康および精神の健康について報告した参加者25名の試験1件を同定した(それぞれMD 1.00 SF-12スコア, 95% CI -5.20〜7.20; I² = 0%, 逆分散法によるランダム効果モデル;極めて質の低いエビデンス; およびMD 1.60 SF-12スコア, 95% CI -5.08〜8.28; I² = 0%, 逆分散法によるランダム効果モデル; 極めて質の低いエビデンス)。日常生活動作の改善に対するtDCSの効果を検討した試験はなかった。6件のうち2件の試験では、介入期に認められた脱落、有害事象および死亡について報告されていた。介入によって脱落、有害事象および死亡の発生率が上昇するという十分なエビデンスは得られなかった(リスク(RD)0.04, 95% CI -0.05〜0.12; P = 0.40, I² = 0%, ランダム効果モデル; 極めて質の低いエビデンス)。

参加者計16名の試験1件が同定され、副次アウトカムである介入期終了時における歩行速度に対し、tDCSと運動療法の併用を対照(tDCSの偽治療)と運動療法の併用と比較検討した結果、有効であるというエビデンスは得られなかった(MD 0.05 m/s, 95% CI -0.15〜0.25; 逆分散法によるランダム効果モデル; 極めて質の低いエビデンス)。介入群と対照群の間で脱落および有害事象に関するエビデンスは得られなかった(RD 0.00, 95% CI -0.21〜0.21; Mantel-Haenszel法によるランダム効果モデル; 極めて質の低いエビデンス)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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