高血圧予防に対するカルシウム補充

レビューの論点

正常血圧者の血圧に対するカルシウム摂取の効果を明らかにすることを目的とした。

背景

高血圧症は、心疾患および腎疾患リスクを高める重篤な健康障害である。複数の研究により、正常血圧の範囲の人であっても、カルシウム摂取量を増やすことで血圧が低下することが示されている。カルシウム摂取量を増やすことで、妊娠アウトカムに対する利益や、血圧低下によって同時にもたらされると考えられる効果もある。高血圧は、死亡率に対する主要な危険因子として同定されており、血圧がわずかに低下するだけでも、冠動脈疾患、脳卒中および死亡の発生を減少させる可能性がある。

試験の特性

すべての年齢層の正常血圧者の血圧に対する、補充や食物の栄養価の強化などの食事性カルシウム介入の効果を評価した試験を選択した。最新の検索日は2014年10月であった。

主な知見

本レビューでは、16件の試験(参加者3,048名)の情報を解析した。カルシウム摂取量の増加により、収縮期および拡張期血圧共にわずかな低下が認められ、それぞれ1.43mmHgおよび0.98mmHg低下した。カルシウムの用量が1000mg/日超で効果が高かった。収縮期血圧は、カルシウムの用量が1000~1500mg/日で1.14mmHg、カルシウムの用量が1500mg/日以上で2.79mmHg低下した。

11~82歳の男女において、血圧の低下が認められたが、若年者の方が低下が大きかった。収縮期血圧は、35歳未満の参加者で2.11mmHg、35歳以上の参加者で 0.96mmHg低下した。

有害事象が報告された試験はなかった。理想的な補充の用量および食事の一部としてまたはサプリメントとしてより有効で安全かどうかを評価するため、さらなる研究が必要である。

エビデンスの質

男女における収縮期および拡張期血圧に対する高い質のエビデンスが認められた。またエビデンスの質は、35歳以上の参加者に対しては高く、若年者に対しては中等度であった。

エビデンスの質は、カルシウムの用量が1000~1500mg/日に対しては高く、それよりも低いまたは高い用量に対しては中等度であった。

16件の試験のうち5件は業界から資金提供を受けていた。

著者の結論: 

カルシウム摂取量の増加により、正常血圧者、特に若年者で、収縮期および拡張期血圧共にわずかに低下し、高血圧症予防における役割を示している。カルシウムと血圧の関係について明らかにするために示された生物学的メカニズムは十分に確認されていないため、これらの結果は慎重に解釈されなければならない。事前に指定された複数のサブグループにおける効果および推定される用量反応効果により、この結論が裏づけられている。血圧がわずかに低下するだけでも、血管疾患減少に対する重要な健康上の意義を有する可能性がある。

若年者をランダム化した十分な検出力を持つ臨床試験の必要性が高い。サブグループ解析は、カルシウムの基本摂取量、年齢、性別、基礎血圧、および体格指数を対象とすべきである。副作用、至適用量およびカルシウム摂取量を改善するための最善策の評価も必要である。

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背景: 

高血圧症は、心血管疾患および腎疾患リスクを高める公衆衛生上の重大な問題である。複数の試験により、カルシウム摂取量と血圧との逆相関が示されている。正常血圧の範囲の人であっても、血圧のわずかな低下により血管疾患リスクが急速に低下することが示されていることから、本レビューの目的は、正常血圧者における予防的健康対策としてのカルシウム補充の効果を評価することである。

目的: 

正常血圧者の血圧低下に対するカルシウム補充の有効性および安全性をプラセボまたはコントロールと比較し評価すること。

検索方法: 

ランダム化比較試験に対し、Cochrane Hypertension Group Specialised Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、MEDLINE、MEDLINE In-Process、EMBASEおよびClinicalTrials.govを、2014年10月まで検索した。Group's Specialised Registerへの組み入れのため、WHO International Clinical Trials Registry Platform (ICTRP)を検索した。同時に、検索した試験の引用文献の一覧表をレビューし、関連論文の著者に連絡を取った。言語による制限は設けなかった。

選択基準: 

正常血圧者を、補充や食物の栄養価の強化などの食事性カルシウム介入対プラセボまたはコントロールにランダム化した試験を選択した。準ランダム化デザインは除外した。主要アウトカムは、高血圧(血圧≥140/90mmHgと定義)および血圧指標とした。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が、組み入れのためにそれぞれ試験を選択し、データを要約し、バイアスのリスクを評価した。

主な結果: 

参加者3,048名を対象とした16件の試験を選択した。二値アウトカムとして高血圧症が報告された試験はなかった。収縮期および拡張期血圧に対する効果は、それぞれ平均差(MD)が-1.43mmHg(95%信頼区間(CI)-2.15~-0.72)および-0.98mmHg(95%CI -1.46~-0.50)であった。35歳未満の参加者の収縮期および拡張期血圧に対する効果(7件の試験、参加者399名)は、-2.11mmHg(95%CI -3.58~-0.64)/-2.61mmHg(95%CI -3.74~-1.49)であった。35歳以上の参加者の収縮期および拡張期血圧に対する効果(9件の試験、参加者2,649名)は、-0.96mmHg(95%CI -1.83~-0.09)/-0.59mmHg(95%CI -1.13~-0.06)であった。女性の収縮期および拡張期血圧に対する効果(6件の試験、参加者1,823名)は、-1.45mmHg(95%CI -2.78~-0.12)/-0.92mmHg(95%CI -1.71~-0.14)であった。男性の収縮期および拡張期血圧に対する効果(5件の試験、参加者617名)は、-2.07(95%CI -3.56~-0.59)/-1.91(95%CI -2.80~-1.02)であった。これらのアウトカムそれぞれに対するエビデンスの質は高かった。ベースラインのカルシウム摂取量にかかわらず、男女ともに効果は一貫している。

収縮期血圧に対する効果は、用量が1000mg未満では0.08mmHg(95%CI -2.16~2.32)、1000~1500mgでは-1.14mmHg(95%CI -2.01~-0.27)、1500mg超では-2.79mmHg(95%CI -4.71~-0.86)であった。拡張期血圧に対する効果は、それぞれ-0.54mmHg(95%CI -2.23~1.15)、-0.71mmHg(95%CI -1.37~-0.06)、-1.43mmHg(95%CI -2.22~-0.64)であった。これらのアウトカムそれぞれに対するエビデンスの質は高かった。

有害事象が報告された試験はなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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