高トリグリセリド血症に対する漢方薬

高トリグリセリド血症は、血中脂質構成成分の一つである血中トリグリセリドの濃度上昇が特徴の病気である。高トリグリセリド血症は、原発性と二次性に分類できる。高トリグリセリド血症は、アテローム動脈硬化、糖尿病、高血圧などの多くの疾患と関連する。

高トリグリセリド血症治療のためのさまざまな薬用植物処方(1種類の薬用植物、漢方登録医薬および異なる種類の薬用植物の混合)を評価するために、漢方薬について実施したすべての入手可能なランダム化比較試験を対象とした。4~6週間の実施期間で、170例の高トリグリセリド血症の参加者を対象とした3件の研究を同定した。原因を問わない死亡、心血管系または脳血管系イベント(心臓発作、脳卒中など)、健康関連QOL(生活の質)、費用に関するデータはなかった。

漢方薬を単独で使用、または脂質降下薬と併用した場合、あるいはライフ・スタイルの変更により血中トリグリセリドの濃度減少にプラス効果を及ぼす可能性について確認された。有害作用に関連した変化は発生せず、重篤な有害事象も認められなかった。

現在のエビデンスに基づくと、選択した研究には不明なバイアスのリスクが含まれ、患者にとって重要な長期アウトカムの報告が欠如しているために確固たる結論に至ることはできない。

著者の結論: 

現在のシステマティック・レビューでは、漢方薬が高トリグリセリド血症にプラス効果を及ぼす可能性について示唆されている。試験では、漢方薬治療の後の重篤な有害作用については報告されなかった。しかし、選択した研究には不明なバイアスのリスクが含まれ、患者にとって重要な長期アウトカムが欠如しているため、確固とした結論には至らなかった。

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背景: 

高トリグリセリド血症は、アテローム動脈硬化、糖尿病、高血圧、カイロミクロン血症を含む多くの疾患と関連している。脂質降下薬として、長期間にわたり漢方薬が用いられている。

目的: 

高トリグリセリド血症に対する漢方薬の効果および安全性を評価すること。

検索戦略: 

コクラン・ライブラリ、MEDLINE、EMBASEおよび中国の複数のデータベースを含む多くのデータベースを検索した(全データベースとも2012年5月まで)。

選択基準: 

高トリグリセリド血症を呈した参加者を対象としたランダム化比較試験で、漢方薬とプラセボ、無治療、および薬理学的または非薬理学的介入とを比較した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが独立してデータを抽出し、バイアスのリスクを評価した。相違点は議論で解決し、合意に基づいて決定した。重要な基準、すなわちランダム・シーケンス生成、割り付けのコンシールメント(隠蔽化)、参加者の盲検化、不完全なアウトカム・データ、選択的アウトカム報告およびその他のバイアス・ソースに対してバイアスのリスクを求めるために試験を評価した。

主な結果: 

170例の参加者を対象とした3件のランダム化試験を選択した。90例の参加者を漢方薬群、80例を比較対照群にランダム化した。各試験の参加者は50例から60例とした。治療期間は、4週間から6週間と異なっていた。選択した試験はすべて中国で実施し、中国語で出版された。総体的に、選択した試験のバイアスのリスクは明らかでなかった。 原因を問わない死亡、心血管系または脳血管系イベント、健康関連QOL(生活の質)、費用に関して、どの試験にもアウトカム・データはなかった。

3種類の漢方薬(Zhusuan Huoxue、Huoxue Huayu Tongluo、Chushi Huayu煎じ薬)を評価した。漢方薬による単独治療の研究(2件の研究)またはゲムフィブロジルと併用治療の研究(1件)の3件の試験はすべて、漢方薬治療が有利な血清中性脂肪値(TG)の結果を報告した。研究間には臨床に関する有意な異質性があったので、メタアナリシスを実施しなかった。

有害作用に関連した変化は発生せず、重篤な有害事象も認められなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.9]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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