小児における滲出性中耳炎[glue ear(耳管の粘液閉塞)]のための抗菌薬

この日本語訳は最新版ではない。英語の最新版をご覧になるにはここをクリックしてください。

滲出性中耳炎(OME)又は「glue ear」は、幼児期の最も一般的な疾患の一つである。glue earは、鼓膜後方の中耳腔内に液体が存在することを意味する。このため難聴が生じ、小児の行動、言語及び学校での発達に影響する可能性がある。glue earは急性中耳炎と密接に関連し、glue earの小児は高頻度に急性中耳炎を発症する傾向があり、急性中耳炎発症後のすべての小児が一定期間glue earを罹患する。glue earの小児3名中約1名の中耳液中に細菌性病原体が同定される。従って本レビューでは、glue earの小児における抗菌薬の有効性の検討を主眼とする。 我々は合計3,027名の小児を含む23件の試験を検討した。上記試験は、抗菌薬投与を受けたglue earの小児と抗菌薬投与を受けていないglue earの小児を比較する試験であった。上記試験では、多種の抗菌薬が使用され、患者の年齢は異なり、glue ear罹患期間も様々であった。投与後、各時点で投与の利益を検討した。 我々が評価した最も重要なアウトカムは、投与開始後2~3カ月目にはすでにglue earを罹患していない小児の割合のであった。上記値は1%~45%で、抗菌薬投与を受けた小児が優れた結果を示した。上記試験の結果は、検討した小児のタイプ、試験デザインなど様々な点で大きく異なるため、統合できなかった。投与6カ月後の結果を検討した結果、抗菌薬投与小児がglue earを罹患していない割合は抗菌薬未投与小児より14%高かった。抗菌薬の最大の効果は、4週間又は3カ月間抗菌薬の持続投与を受けた小児に認められ、抗菌薬投与を受けた小児が投与終了時にすでにglue earを罹患していない割合は、抗菌薬未投与小児より32%~34%高かった。 glue earに対する抗菌薬使用の結果としての聴覚の大幅な改善のエビデンスは認められず、グロメット使用小児数への影響も認められなかった。発話、言語及び認知発達又は小児の健全性を検討する試験は同定されなかった。 本試験のレビュー結果は、glue earの小児に抗菌薬をルーチン投与すべきであるという考えを裏付けるものではなかった。上記におけるわずかな利益の可能性は常に、抗菌薬使用の副作用とリスクとの間でバランスをとる必要がある。

著者の結論: 

本レビュー結果は、18歳までの滲出性中耳炎小児に対する抗菌薬のルーチン使用を支持するものではなかった。抗菌薬の最大効果は、4週間及び3カ月間持続投与した小児に認められた。抗菌薬関連の明らかな利益が実証された場合でも、治療決定の際に有害作用可能性とバランスをとる必要がある。抗菌薬の直接的な有害作用は共通しており、菌耐性化は中耳炎などの一般的疾患に対する抗菌薬の広範な使用と因果関係が認められてきた。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

滲出性中耳炎(OME)の特徴は、急性感染の症状又は徴候のない無傷の鼓膜後方の中耳内の液体貯留であるが、OME小児3名中約1名の中耳液中に細菌性病原体が同定される。多くの症例でOMEは短期間の軽度難聴を引き起こす。若年期に経験し、(両側)OMEのエピソードが難治性又は再発性の場合、併発する難聴は重大となり言語発達及び行動に否定的影響をもたらす可能性がある。ほとんどの症例でOMEは自然治癒するため、中耳炎による滲出が持続し難聴を併発する可能性のある小児のみに治療が必要になると思われる。過去のコクラン・レビューは、OMEにおける換気チューブ挿管、アデノイド切除術、自己通気、抗ヒスタミン薬、充血除去薬及び、経口及び局所経鼻内ステロイド薬の有効性を検討してきたが、本レビューではOME小児における抗菌薬の有効性を検討する。

目的: 

18歳までのOME小児における抗菌薬使用の効果を評価する。

検索方法: 

Cochrane Ear, Nose and Throat Disorders Group Trials Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、PubMed、EMBASE、CINAHL、Web of Science、BIOSIS Previews、Cambridge Scientific Abstracts、ICTRP並びに、発表済み及び未発表試験のその後追加された情報源を検索した。検索年月日は、2012年2月22日であった。

選択基準: 

経口抗菌薬をプラセボ、無治療又は有効性が実証されていない治療法と比較しているランダム化比較試験(RCT)。本試験主要アウトカムは、2カ月から3カ月でのOME完全治癒であった。副次アウトカムは、その他の時点でのOMEの治癒、聴覚、言語及び発話、換気チューブ挿管及び有害作用であった。

データ収集と分析: 

レビューア2名が別々に、標準化されたデータ抽出用紙を用いてデータを抽出し、Cochrane「Risk of bias(バイアスリスク)」ツールを用い選択した試験の質を評価した。リスク及びリスク比を二値データで95%信頼区間とともに表示した。異質性が75%を超える場合、データを統合しなかった。

主な結果: 

試験には、抗菌薬、参加者、アウトカム指標及び評価時点を網羅する23件の試験(小児3,027名)が含まれた。全体として、一般にバイアスリスクが低いとされる試験を評価した。 本試験主要アウトカムは、2カ月から3カ月でのOME完全治癒であった。5件の各対象試験中で上記治癒[リスク(RD)]を示した小児の割合の(改善)は、1%(RD 0.01、95%CI -0.11~0.12、有意なし)から45%(RD 0.45、95%CI 0.25~0.65)であった。上記試験の結果は、臨床的及び統計的異質性のため統合できなかった。 6カ月間を超える完全治癒のデータの統合解析は実施可能で、13%(RD 0.13、95%CI 0.06~0.19)の治癒率増加であった。 治療終了時に完全治癒の統合解析が実施可能で、治癒率が10日間から2週間の治療で17%(RD 0.17、95%CI 0.09~0.24)、4週間の治療で34%(RD 0.34、95%CI 0.19~0.50)、3カ月間の治療で32%(RD 0.32、95%CI 0.17~0.47)及び6カ月間以上の持続治療で14%(RD 0.14、95%CI 0.03~0.24)増加であった。 滲出性中耳炎に対する抗菌薬使用の結果としての聴覚に大幅な改善のエビデンスを認めることはできず、又換気チューブ挿管率に対する効果も認められなかった。発話、言語及び認知発達又はQOLを検討する臨床試験は同定されなかった。 6件の試験で報告された抗菌薬投与の有害作用に関するデータは、異質性が高く統合できなかった。各試験有害事象発現増加は、3%(RD 0.03、95%CI -0.01~0.07、有意なし)から33%(RD 0.33、95%CI 0.22~0.44)であった。

訳注: 

監  訳: 尹 忠秀,2013.1.30

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

Share/Save