糖尿病患者の足潰瘍の治癒を目的としたアルギネート創傷被覆材

糖尿病は血中グルコース濃度が上昇する疾患で、発生が多く、英国では約280万名(人口の約4.3%)が罹患している。創傷被覆材は糖尿病患者の足潰瘍の治療に広く用いられている。使用できる創傷被覆材の種類は多く、価格も大きく異なる。本レビュー(参加者数375名の6件の試験)では、糖尿病性足潰瘍の治癒に対し、アルギネート創傷被覆材が他の創傷被覆材よりも有効であることを示唆するエビデンスを得ることができなかった。より質の高い研究がさらに必要である。

著者の結論: 

現時点では、糖尿病患者の足潰瘍に対してアルギネート創傷被覆材が他の創傷被覆材よりも有効であることを示唆するエビデンスは得られていないが、この分野では多くの試験が非常に小規模である。使用する創傷被覆材を決定するときには、被覆材の価格、および浸出液に対応する材質など被覆材タイプによる創傷管理の特性を考慮している可能性がある。

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背景: 

糖尿病患者では足潰瘍の発生が多く、世界中で深刻な健康上の問題となっている。潰瘍治療では創傷被覆材が重要であり、臨床医および患者は、アルギネート創傷被覆材をはじめ、さまざまな種類から選択する。創傷被覆材の使用に関する決定を容易にするため、現時点で得られているエビデンスの明確かつ最新の概説が必要である。

目的: 

糖尿病患者の足潰瘍の治癒に対し、アルギネート創傷被覆材を創傷被覆材なしまたは他の創傷被覆材と比較すること。

検索戦略: 

2013年4月の初回更新版では、Cochrane Wounds Group Specialised Register、The Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) (コクラン・ライブラリ)、Ovid MEDLINE、Ovid MEDLINE (In-Process & Other Non-Indexed Citations)、Ovid EMBASEおよびEBSCO CINAHLをデータベース検索した。言語および出版日による制限は設けなかった。

選択基準: 

糖尿病患者の足潰瘍において、潰瘍治癒に対するアルギネート創傷被覆材の効果を他の創傷被覆材または創傷被覆材なしと比較した既報または未発表のランダム化比較試験(RCT)。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ試験を選択し、バイアスのリスクを評価し、データを抽出した。

主な結果: 

6件の試験(参加者375名)を本レビューに組み入れた。これらの試験では、アルギネート創傷被覆材を一般的な一次創傷被覆材、フォーム状創傷被覆材、銀含有創傷被覆材、ファイバー・ハイドロコロイド創傷被覆材と比較した。2件の試験のメタアナリシスでは、アルギネート創傷被覆材と一般的な一次創傷被覆材の間で統計学的有意差は認められなかった(リスク比(RR)1.09, 95% CI 0.66〜1.80)。アルギネート創傷被覆材をフォーム状創傷被覆材と比較した2件の試験の統合データでは、潰瘍治癒に関して統計学的有意差は認められなかった(RR 0.67, 95% CI 0.41〜1.08)。抗菌(銀含有)ハイドロコロイド創傷被覆材を標準的なアルギネート創傷被覆材と比較した結果、糖尿病性足潰瘍の治癒数に統計学的有意差は認められなかった(RR 1.40, 95% CI 0.79〜2.47)。いずれの試験も追跡期間が短く(6から12週間)、サンプル・サイズが小さかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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