切除不能な局所進行膀胱癌または転移性膀胱癌に対するゲムシタビン

著者の結論: 

発表されているエビデンスのレビューにより、ゲムシタビンとシスプラチンの併用を報告した1件の試験でMVACよりも良好な安全性プロファイルが認められ、ゲムシタビンとシスプラチンの併用が転移性膀胱癌の第一治療選択肢として検討できる可能性があることが明らかになった。しかし、データは1試験のみに限られる。シスプラチンに忍容性のない患者はゲムシタビンとカルボプラチンの併用により利益を得られる可能性がある。

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背景: 

切除不能な局所進行膀胱移行上皮癌または転移性膀胱移行上皮癌の予後は不良であり、ほとんどの患者は2~3年で死亡する。局所進行または転移の認められる段階での膀胱癌に対する臨床管理は対症療法であり、全身化学療法が主な治療選択肢となる。シスプラチン、メトトレキサート、ドキソルビシン、ビンブラスチンなどの多数の細胞毒性薬が転移性疾患に対する活性を示している。しかし、奏功率はまだ改善の必要があり、毒性が重度となることがあるため、利益/リスク比を向上させたさらに新しい薬剤の探索が常に行われている。そうした薬剤の有望な1つがゲムシタビンである。

目的: 

切除不能な局所進行膀胱癌または転移性膀胱癌の管理に用いられるゲムシタビンの有効性と毒性を評価する。

検索戦略: 

検索戦略として、MEDLINEを用いて、切除不能な局所進行膀胱癌または転移性膀胱癌の治療にゲムシタビンを投与しているランダム化試験を同定した。検索は1966年から2010年7月まで行った。EMBASE、CINAHL、Cochrane Database of Systematic Reviews、LILACS、Web of ScienceRなどの他のデータベースも検索した。言語または地域の制約は設けなかった。

選択基準: 

2名のレビューアが電子的検索とハンドサーチにより標題と抄録を手作業で選別し、本レビューの選択基準に合致するかどうかを判断した。比較試験の中で少なくとも1群でゲムシタビンを投与しているランダム化比較試験または準ランダム化臨床試験であることを条件に、試験を選択した。

データ収集と分析: 

2名のレビューアがデータの抽出を重複して行った。著者の詳細情報、試験デザイン、登録患者の特性、介入の詳細情報、主要アウトカム指標および副次アウトカム指標に関するデータなどの情報を収集した。

主な結果: 

3件のランダム化試験で、ゲムシタビンとシスプラチンの併用(GCis)を各試験での投与群の1つで投与していた。1件目のランダム化試験では、GCisをMVAC(メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シスプラチン)と比較しており、総生存に有意差は認められなかったが(ハザード比 1.09、95%CI 0.88~1.34、P = 0.443)、GCisレジメンでは、好中球減少性敗血症(12%に対して1%、P = 0.001)と粘膜炎(22%に対して1%、P = 0.001)の発現頻度が少なかった。2件目のランダム化試験では、GCisをゲムシタビンとカルボプラチの併用(GCarbo)と比較しており、GCisによって1年生存率が改善したことが報告されているが、有意ではなかった(37%に対して64%)。3件目のランダム化試験では、GCisをゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセルの併用(GCisPac)と比較しており、ここでも総生存に有意差は認められなかった(中央値はGCisPacが61週に対してGCisは49週)。1件のランダム化試験では、シスプラチンをベースにした化学療法に適さない患者を対象に、GCarboをメトトレキサート、カルボプラチン、ビンブラスチンの併用(MCarboV)と比較評価していた。GCarboではMCarboVに比較して総奏功率が良好で(20%に対して38%)、重度の急性毒性が少なかった(23%に対して14%)。1件のランダム化試験では、ゲムシタビンとパクリタキセルの週3回併用投与(GPac3)を週2回のレジメンと比較評価しており、総生存に有意差はなかったが(中央値は週2回のレジメンが9カ月に対して週3回が13カ月)、毒性はGPac3に多く認められ、特に脱毛症に顕著であった(32%に対して76%)。さらに大規模な試験では、ゲムシタビン(1 g/m2)とパクリタキセル(175 mg/m2)の週3回6サイクルの併用投与を週2回の維持投与と比較していた。奏功率、無増悪生存、疾患特異的生存率、総生存に有意差はなかった。

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