多発性硬化症がある人に対する記憶のリハビリテーション

この日本語訳は最新版ではない。英語の最新版をご覧になるにはここをクリックしてください。
著者の結論: 

MS患者の記憶機能または機能的能力に対して記憶のリハビリテーションの有効性を裏付けるエビデンスはない。しかし、この結論はこの分野で検討した主な研究の一部の質が低かったために出たものである。方法論的により質が高く、報告の質も良い堅牢なRCTを実施する必要がある。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

認知機能障害、特に記憶の障害は多発性硬化症(MS)患者に一般的にみられ、機能的な活動を全うする患者の能力に潜在的な影響を及ぼす可能性がある。単一症例または小規模群の研究から、記憶のリハビリテーションがMS患者に有益である可能性を示したエビデンスが得られている。しかし、ランダム化比較試験(RCT)およびシステマティック・レビューから得られた所見は決定的ではない。

目的: 

記憶障害のあるMS患者に対する記憶のリハビリテーションの有効性を評価すると共に、このような介入の機能的能力に対する効果を評価すること。

検索方法: 

Cochrane Multiple Sclerosis Group's Specialised Trials Register(最終検索2011年2月)ならびに以下の電子データベース、すなわちCochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ、2010年最新号)、NIHR Clinical Research Network database、MEDLINE(1966年~2011年2月)、EMBASE(1980年~2011年2月)、CINAHL(1982年~2010年4月)、PsycINFO(1980年~2011年2月)、AMED(1985~2010年4月)、British Nursing Index(1985~2010年4月)およびCAB抄録(1973~2010年4月)を検索した。関連性のある雑誌および参考文献リストもハンドサーチした。

選択基準: 

MS患者を対象とし、記憶のリハビリテーションを受けた群を対照群と比較した記憶のリハビリテーションまたは認知のリハビリテーションに関するRCT。初めにそれぞれ独立して選択し、その後グループ内で討議して確認した。MS以外の疾患を原因とする記憶障害の参加者を含めた研究は、MS罹患のサブグループが同定出来ない限り除外した。

データ収集と分析: 

レビューア4名が研究の選択、質の評価およびデータの抽出に関与した。必要があれば詳細な情報を得るため主な研究の治験責任者に連絡を取った。データの解析および統合は介入のシステマティック・レビューに関するコクラン・ハンドブック、バージョン5.1.0(2011年3月更新)に準じて行った。「最良のエビデンス」の統合は選択した主要な研究の方法論的な質に基づいて実施した。

主な結果: 

参加者521例を含む研究8件が選択された。介入には内的および外的な記憶補助に関するコンピュータプログラムおよびトレーニングなど、様々な記憶の再訓練法が含まれた。対照群は評価のみの群から討議とゲーム、非特異的な認知の再訓練および注意または空間視覚の訓練まで様々な形態であった。選択した研究バイアスリスクは一般に低かった。研究のうち3件はその方法論のいくつかに関連してバイアスリスクが高いと評価された。メタアナリシスから、即時のまたは長期的な記憶機能または機能的能力に対して記憶のリハビリテーションに有意な効果はないことが明らかになった。即時のまたは長期的な介入のいずれも、記憶障害の自覚的な報告[各々標準平均差(SMD)0.06(95%信頼区間[CI]-0.21~0.34)およびSMD 0.04(95%CI -0.24~0.31)]、他覚的な記憶[SMD 0.24(95% CI -0.02~0.49)および SMD 0.19(95%CI -0.09~0.47)];気分 [SMD -0.04 (95% CI -0.26~0.17)および SMD 0.13 (95%CI -0.10~0.36)]ならびに生活の質[SMD -0.13(95%CI -0.12~0.39)およびSMD -0.11(95% CI -0.39~ 0.17)]に対して有意な効果は認められなかった。日常生活動作については、即時治療効果は認められなかったが [SMD -0.13(95%CI -0.60~0.33)]、長期的な経過観察で介入群は対照群より有意に悪い結果であった[SMD -0.33(95%CI -0.63~-0.03)]。

訳注: 

監  訳: 林 啓一,2012.7.24

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

Share/Save