成人の慢性便秘症の治療のためのバイオフィードバック(肛門周辺の筋肉および正しいいきみ方を再訓練する器具の使用)

慢性便秘症(明らかな医学的原因がなく、長期にわたって満足に排便できない状態)は厄介で社会的に制限された障害になる恐れがある。腸の動きのコントロールを担う筋肉の緊張を和らげられないといった、多くの原因がある可能性がある。「バイオフィードバック」では、適切に筋肉を協調させ使用する方法を患者に示すためにコンピュータ装置や直腸バルーンが用いられており、この方法がしばしば推奨される。

このシステマティッック・レビューの目的は、腸の動きのコントロールを担う筋肉の緊張を和らげることのできない成人において、慢性便秘の治療に用いられるバイオフィードバック治療の有効性と副作用を検討することである。このレビューでは総計931例の参加者が含まれる17件の適格性のある研究を同定した。これらの研究では、異なるタイプのバイオフィードバック、バイオフィードバックと偽バイオフィードバック(偽バイオフィードバック治療)、またはバイオフィードバックと食事、運動および緩下剤から成る標準的治療をそれぞれ比較し、有効性を検討した。バイオフィードバックがジアゼパム(Vailumとして知られている鎮静薬)の経口投与、偽バイオフィードバックおよび緩下剤よりも優れているとするいくつかのエビデンスがある。60人の参加者による一つの研究ではコンピュータ装置を利用したバイオフィードバックがジアゼパム(通常便秘の治療では使用しない鎮静薬)の経口投与より優れていたことがわかった。77人の参加者による他の研究においては、バイオフィードバックが偽バイオフィードバックや食事、運動および緩下剤より成る標準的治療よりも優れていることが示唆されている。109人の参加者による他の研究においても、コンピュータ装置を利用したバイオフィードバックは、緩下剤、食事および生活習慣の指導による従来の治療よりも優れていることが示唆された。外科手術(恥骨直腸筋の部分切開およびステープル式経肛門的直腸切除)はバイオフィードバックよりも優れていることが報告されている。しかし、外科手術群においては創傷感染、便失禁、疼痛およびさらなる外科的介入を必要とする出血といった副作用の高いリスクがあった。60人の参加者によるもう一つの研究においては、外科的介入(内肛門括約筋および恥骨直腸筋の後部筋腫摘出術)とバイオフィードバック治療の間には有効性のが示されなかった。ボツリヌス毒素A注射はバイオフィードバックよりも短期間の利益がある可能性があるが、有益性は継続しない。バイオフィードバックに関する有害事象は認められなかった。しかし、大部分の研究では有害事象について特に報告していなかった。このレビューの結果は慎重に解釈される必要がある。なぜなら、結果が少数の患者に基づいており、結果の正確性の不足と研究の方法論的な質の低さのため、研究から得られたエビデンスの全体的な質は低いか非常に低いものと評価されたためである。それゆえ、腸の動きのコントロールを担う筋肉の緊張を和らげることのできない慢性便秘症の患者に対するバイオフィードバック治療の有効性と副作用の可能性に関して、確固たる結論はみいだすことができない。 より良いエビデンスを提供するために、さらに大規模な臨床試験が求められる。

著者の結論: 

現在、慢性便秘の人の管理において、バイオフィードバックの有効性と安全性に関していかなる確固たる結論も述べるにはエビデンスが不十分である。慢性便秘および排便協調運動障害の人の管理に対するバイオフィードバックの有効性を裏づける、単一研究による質の低いあるいは非常に質の低いエビデンスを確認した。しかし、大部分の試験は方法論的な質に乏しく、バイアスの影響を受けていた。 確固たる結論が引き出せるようにするには、十分なサンプル・サイズ、妥当性のあるアウトカム指標(特にアウトカム指標が報告された患者)および長期の追跡を行う、十分デザインされたRCTがさらに必要である。

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背景: 

バイオフィードバック療法は、二次または三次ケアとして専門医に紹介される慢性便秘症の人の症状を治療するために用いられてきた。しかし、施設によってバイオフィードバックの方法はさまざまであり、それぞれ示唆されている有効性や効果は確立されていない。

目的: 

成人の慢性特発性(機能性)便秘症の治療におけるバイオフィードバックの有効性と安全性を確認すること。

検索方法: 

開始時点から2013年12月16日までの以下のデータべースを検索した:CENTRAL、Cochrane Complementary Medicine Field、Cochrane IBD/FBD Review Group Specialized Register、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、British Nursing IndexおよびPsychINFO。会議の議事録および関連論文の引用文献のハンドサーチも実施した。

選択基準: 

慢性特発性便秘症の成人に対するバイオフィードバックについて評価したすべてのランダム化試験を選択のために検討した。

データ収集と分析: 

主要アウトカムは、対象の研究において定義されたように、全般的改善あるいは臨床上の改善とした。副次アウトカムには、対象の研究において定義されたように、QOLおよび有害事象とした。可能なかぎり、2値アウトカムの相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)ならびに連続アウトカムの平均差および95%CIを算出した。コクランのバイアスのリスクに関するツールを用いて対象の研究の方法論的な質について評価した。 それぞれのアウトカムを裏づける全体的なエビデンスの質をGRADE基準を用いて評価した。

主な結果: 

総計931例の参加者による適格性のある研究を17件同定した。大部分の参加者が慢性便秘および排便協調運動障害を有していた。16の試験で盲検化に対して高いバイアスのリスクが認められた。症例減少バイアス(4試験)および潜在的バイアス(5試験)も認められた。研究の母集団間の、異なる参加者の異質性および異なるアウトカム指標の範囲が広いため、メタアナリシスは不可能であった。バイオフィードバックを受けた人では、介入後の効果サイズがさまざまであり、その範囲は40〜100%であった。筋電計(EMG)バイオフィードバックは最もよく使用されているが、他のバイオフィードバック法よりも、ある一つのバイオフィードバック法の方が有効であるかどうかについては、エビデンスが不足している。バイオフィードバックが、ジアゼパムの経口投与、偽バイオフィードバックおよび緩下剤よりも優れているという質の低いまたは非常に質の低いエビデンスを確認した。一つの研究(n=60)ではEMGバイオフィードバックがジアゼパムの経口投与より優れていたことがわかった。3カ月の追跡の時点で、ジアゼパム服用患者の23%(7/30)と比較して、バイオフィードバックを受けた患者の70%(21/30)に便秘の改善が認められた(RR 3.00、 95% CI 1.51〜5.98)。一つの研究では、圧バイオフィードバックを偽バイオフィードバックまたは食事、運動および緩下剤から成る標準的治療と比較していた。3カ月の時点での週当たりの完全自発腸運動(CSBM)の平均数は、偽バイオフィードバック群の2.8と比較して、バイオフィードバック群では4.6であった(MD 1.80、 95% CI 1.25〜2.35; 52例)。3カ月の時点でのCSBMの平均数は、標準的ケア群の1.9と比較して、バイオフィードバック群では4.6であった(MD 2.70、95% CI 1.99〜3.41; 49 例)。他の研究(n=109)では、EMGバイオフィードバックを、緩下剤、食事および生活習慣の指導を用いた従来の治療と比較した。この研究では、6カ月の時点、12カ月の時点で、緩下剤治療患者の22%(12/55)と比較してバイオフィードバックを受けた患者の80%(43/54)が臨床上の改善を報告したことが確認された(RR 3.65、95% CI 2.17〜6.13)。一部の外科手術(恥骨直腸筋の部分切開およびステープル式経肛門的直腸切除術(STARR))では、外科手術群にハイリスクの有害事象(創傷感染、便失禁、疼痛および追加の外科的介入を必要とする出血)がみられたが、バイオフィードバックよりも優れていることが報告された。治療の成功は、1年の時点における排便妨害スコアの50%までの低下と定義されたが、STARR患者群の82%(44/54)と比較して、EMGバイオフィードバック患者群においては33%(3/39)と報告された(RR 0.41、95% CI 0.26〜0.65)。他の研究では、1年の時点での平均の便秘スコアは恥骨直腸筋の部分切開群では10.5であったことと比較して、バルーンを用いたバイオフィードバック群では16.1であった(MD 5.60、95% CI 4.67~6.53; 40例)。他の研究(n=60)においては、有効性に有意が認められず、外科的介入(内肛門括約筋および恥骨直腸筋の後部筋腫摘出術)はバイオフィードバックよりも優位であることが示されなかった。バイオフィードバックとボツリヌス毒素Aの相対的有効性に関して、矛盾する結果が得られた。一つの小規模研究(48例の参加者)によって、ボツリヌス毒素A注射はバイオフィードバックよりも短期間の有益性がある可能性があるが、追跡1年の時点で治療の相対的効果ははっきり確かめられていないことが示唆された。バイオフィードバックに関する有害事象は認められなかった。しかし、大部分の研究では有害事象について特に報告していなかった。これらすべての研究から得られた結果は慎重に解釈される必要がある。それはGARDE解析により、高いバイアスのリスク(例えば、オープンラベル試験、自己選択バイアス、不完全なアウトカムデータおよびベースラインの不均衡)および不正確さ(例えば、疎データ)のため、主要アウトカム(例えば、研究で定義されるような臨床改善あるいは全般的改善)についてエビデンスの全体的な質が低いあるいは非常に低いものと評価されたためである。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.6]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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