糖尿病患者でのうつ病に対する心理的および薬物的介入

うつ病は、糖尿病のない患者に比べて糖尿病患者で約1.5倍多くみられ、予後は不良です。このレビューでは、糖尿病をもつうつ病患者に対する心理的治療と抗うつ薬についての臨床試験を調べました。これらの治療が、抑うつ、血糖、糖尿病治療レジメンへのアドヒアランス、糖尿病合併症、すべての理由による死亡、医療費および健康関連の生活の質に及ぼす効果を明らかにすることが目的でした。このレビューに関連がある参加者1,592名の19件の試験を同定しました。参加者1,122名の8件の試験が、通常治療と比較して心理的治療を検討していました(治療期間3週~12ヵ月、治療後フォローアップ期間0~6ヵ月)。参加者377名の8件の試験プラセボと比較して抗うつ薬を検討していました(介入期間3週~6ヵ月、治療後フォローアップなし)。参加者93名の3件の試験で、異なる2つの抗うつ薬の効果を比較していました(介入期間12週、治療後フォローアップなし)。まとめると、心理的治療と抗うつ薬は、糖尿病患者のうつ病アウトカムに対して、中等度の有効性が認められました。抗うつ薬は血糖に対して肯定的な効果がありましたが、心理的治療の血糖に対する効果には結論が出ませんでした。患者評価による生活の質は、心理的治療および抗うつ薬投与でも利益がみられませんでした。医療費、すべての理由による死亡および糖尿病合併症の検討は十分ではありませんでした。重篤および重度の有害作用は、まれ(薬物治療)か、報告はありませんでした(心理的治療)。全体として、数件の低品質の試験および試験特性の大幅な多様性のため、エビデンスは少なく確定的ではありませんでした。

著者の結論: 

心理的介入および薬物介入は、糖尿病患者におけるうつ病のアウトカムに対し、中等度かつ臨床的に意味のある効果を有している。血糖コントロールは、薬物試験で中等度改善が認められたが、心理的介入では結論には至らなかった。糖尿病治療のアドヒアランス、糖尿病合併症、すべての理由による死亡、医療経済およびQoLについては、十分に検討されていなかった。全体として、バイアスリスクが大きい質の低い研究が存在することおよび、検討した集団と介入群間に異質性が存在することにより、エビデンスは少なく確定的ではなかった。

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背景: 

うつ病は糖尿病患者に高頻度で合併し、不良な予後関連している。

目的: 

うつ病と糖尿病を合併する患者での、うつ病に対する心理的および薬物的介入の効果を明らかにすること。

検索方法: 

2011年12月までの記録について電子的データベースを検索した。コクラン・ライブラリ中のCENTRAL、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、ISRCTN Registerおよびclinicaltrials.govを検索した。また、選択したランダム化比較試験(RCT)の参考文献リストを調べ、著者らに連絡を取った。

選択基準: 

うつ病と糖尿病を合併する成人患者を対象として、うつ病に対して心理的および薬物的介入を検討しているRCTを選択した。主要アウトカムは抑うつと血糖コントロールとした。副次的アウトカムは、糖尿病治療レジメンの遵守、糖尿病合併症、すべての理由による死亡、医療費および健康関連の生活の質(HRQoL)とした。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々に、同定した論文の選択について検討し、選択した研究からデータ抽出を行った。治療アウトカムの推定値は、ランダム効果モデルメタアナリシスをもちいて計算した。

主な結果: 

データベース検索により3,963件の参考文献を同定した。参加者1,592名の19件の試験を選択した。心理的介入研究(8試験、参加者1,122名、治療期間3週~12ヵ月、治療後フォローアップ期間0~6ヵ月)では、短期(治療終了時)、中期(治療後1~6ヵ月)および長期(治療後6ヵ月超)のうつ病重症度に有益な効果が示された[標準化平均差(SMD)の範囲、-1.47~-0.14、8試験]。しかし、研究間の異質性が大きくメタアナリシスは実施しなかった。短期のうつ病寛解率[OR 2.88、95%信頼区間(CI)1.58~5.25、P = 0.0006、参加者647名、4試験]および中期のうつ病寛解率(OR 2.49、95%CI 1.44~4.32、P = 0.001、参加者296名、2試験)は、通常治療に比べて心理的介入で上昇していた。心理的介入試験での血糖コントロールに関するエビデンスには異質性があり、結論は出なかった。通常治療に比べた3件の心理的介入試験の結果に基づくと、QOLの有意な改善は認められなかった。医療費ならびに糖尿病およびうつ病薬物療法の遵守は、1件の研究でしか検討されておらず、信頼できる結論は出せなかった。糖尿病合併症およびすべての理由による死亡は、選択した心理的介入試験では検討されていなかった。<br /><br />プラセボ対照薬物介入(8試験、参加者377名、介入期間3週~6ヵ月、治療後のフォローアップなし)に関しては、短期のうつ病重症度に対して抗うつ薬による中等度の有益な効果が認められた[全研究:SMD -0.61、95%CI -0.94~-0.27、P = 0.0004、参加者306名、7試験;選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):SMD -0.39、95%CI -0.64~-0.13、P = 0.003、参加者241名、5試験]。短期のうつ病寛解率は抗うつ薬試験で上昇していた(OR 2.50、95%CI 1.21~5.15、P = 0.01、参加者136名、3試験)。血糖コントロールは短期では改善していた[糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)の平均差(MD) -0.4%、95%CI -0.6~-0.1、P = 0.002、参加者238名、5試験]。HRQoLおよびアドヒアランスは、それぞれ1件の試験でのみ検討されており、統計学的有意は示されなかった。中期および長期の、うつ病コントロールおよび血糖コントロールアウトカム、ならびに医療費、糖尿病合併症および死亡率は、薬物介入試験では検討されていなかった。薬物介入と他の薬物介入との比較(3試験、参加者93名、介入期間12週、治療後フォローアップなし)では、1つの試験でシタロプラムに比べてフルオキセチン投与患者で有意に血糖コントロールの改善(HbA1cのMD -1.0%、95%CI -1.9~-0.2、参加者40名)が示されたが、それ以外の試験では、検討した薬物間に有意は示されなかった。

訳注: 

監  訳: 三浦 智史, 2014.3.14

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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