耳鳴に対する経頭蓋磁気刺激法

耳鳴は、耳または頭の中で音が聞こえる状態である。自覚的耳鳴は他の人には聞こえない。耳鳴の正確な原因は不明である。現時点では、すべての患者に有効な治療法はみつかっていない。研究者は最近、特別な技術(機能核磁気共鳴画像法[fMRI]や陽電子放出断層撮影法[PET]など)を用いて脳を画像化することに成功した。その結果、中枢聴覚系および関連部位におけるニューロンの自発的活動の高まりが耳鳴の原因であると考えられている。反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は脳内の電流を誘導する非侵襲的な方法で、ニューロンの活動を低下させる可能性がある。本コクラン・レビューの目的は、耳鳴の治療に対するrTMSの有効性および安全性を評価することであった。

検索の結果、283件の文献が該当した。このうち、耳鳴を有する患者233名を対象とした5件の試験が選択基準を満たしていたため、本レビューに組み入れた。

1件の試験では「多重波長のrTMS」を、1件の試験では高周波数rTMSを、3件の試験では低周波数rTMSを検討した。1件の試験では低周波数rTMSの使用で耳鳴の重症度および障害の程度により「部分改善」が認められたが、この結果は、同一の周波数でrTMSを検討した他の2件の試験では再現されなかった。さらに、唯一得られたこの有望な知見については、試験著者によって記録されたさまざまな時点における多数の変数を考慮して解釈すべきである。2件の試験結果を統合した結果、rTMSを実施した患者では耳鳴の大きさが改善することを示すことができた。

rTMSは耳鳴を有する患者に対して短期間であれば安全な治療法であるが、長期間実施した場合の安全性を示すデータは得られていない。

著者の結論: 

耳鳴を有する患者に対する低周波数rTMSの使用を裏付ける知見は非常に限られている。耳鳴が患者の生活の質に与える影響に関する知見は、バイアスのリスクが低い1件の試験から得られており、この知見は1時点における1種類のアウトカムに基づいている。耳鳴の大きさへの効果に関しては、信頼区間の範囲が広い統合データ解析に基づいている。

試験の結果、短期間ではrTMSが耳鳴の安全な治療法であることが示唆されるが、長期間におけるrTMSの安全性を裏付けるにはデータが不足している。

耳鳴を有する患者に対するrTMSの有効性を確認するには、サンプル・サイズが大きい、前向きランダム化プラセボ対照二重盲検試験がさらに必要である。今後の研究では、妥当性を検証し、耳鳴に特化した共通の質問票および評価尺度を使用すべきである。

アブストラクト全文を読む
背景: 

耳鳴は、外部からの音刺激がないにもかかわらず耳または頭部で音を感知する状態である。反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は脳内で電流を誘導する非侵襲的方法で、耳鳴をはじめとする多数の神経精神障害の治療において、近年注目が集まっている。

目的: 

耳鳴を有する患者に対するrTMSの有効性および安全性をプラセボと比較評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Ear, Nose and Throat Disorders Group Trials Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、PubMed、EMBASE、CINAHL、Web of Science、BIOSIS Previews、Cambridge Scientific Abstracts、ICTRPおよびその他の情報源を、既報および未発表の試験について検索した。最新の検索日は2011年5月24日であった。

選択基準: 

rTMSの実治療と偽治療を比較したランダム化比較試験。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が、取得したすべての文献のタイトル、アブストラクトおよびキーワードのレビューを行った。3名のレビュー著者がそれぞれデータの収集および抽出を行い、バイアスのリスクを評価した。

主な結果: 

233名が参加した5件の試験が選択基準を満たした。各試験では異なるrTMS装置が使用されており、波形や周波数も異なっていた。5件の試験はいずれも比較的小規模であったが、バイアスのリスクは全体的に低かった。

耳鳴が患者の生活の質に及ぼす影響に関して、低周波数rTMSと対照群となる偽治療を比較した1件の試験でのみ、追跡4カ月目にTinnitus Handicap Inventory(THI)スコアの統計学的に有意な改善が認められた(試験著者は「部分改善」と定義[THIは21%〜80%低下])。しかし、同一周波数のrTMSを検討した別の2件の試験では、統計学的に有意な改善は認められなかった。さらに、唯一得られたこの有望な知見については、試験著者によって記録されたさまざまな時点における多数の変数を考慮して解釈すべきである。

事前に規定したサブグループ解析手順に従って、1件の試験からデータを抽出し、「周波数の低い」低周波数rTMS(1 Hz)と「周波数の高い」低周波数rTMS(10 Hz、25 Hz)の有効性の違いを検討した。その結果、周波数が1 HzのrTMS群と偽治療群の間で追跡4カ月目の耳鳴の重症度および障害の程度に統計学的有意差が認められた(「部分」改善)。しかし、周波数が10 Hzから25 HzのrTMSについて追跡4カ月目の耳鳴の重症度および障害の程度を評価した結果、対照群となる偽治療との間に統計学的有意差は認められなかった。

rTMSを施行した患者における耳鳴の大きさについて2件の試験結果を統合した結果、耳鳴の大きさに統計学的に有意な減少が認められた(リスク比4.17, 95% 信頼区間1.30〜13.40)。しかし、この知見は2件の小規模試験に基づいているため、信頼区間の範囲が極めて広かった。

いずれの試験でも重篤な有害作用は報告されなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.13]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
CD07946 Pub2

Tools
Information