卵巣癌の治療に対する血管新生阻害薬

著者の結論: 

卵巣癌の治療に対する血管新生阻害薬の有効性および安全性について、すべての結果を発表しているRCTによるエビデンスはまだないが、いくらかの予備的結果が5件の試験から得られる。標準的化学療法に加え、ベバシズマブの併用療法および維持療法を行なうことによって、進行卵巣癌新規患者で疾患の進行するリスクが低下するというエビデンスが2件の試験のメタアナリシスで認められた。また、低用量AMG 386が再発卵巣癌患者での疾患進行のリスクを低下するとのエビデンスが1件の試験で認められた。しかし、血管新生阻害薬が全生存(OS)を改善するエビデンスは現在なく、卵巣癌患者の治療に血管新生阻害薬をルーチンに使用するのが良いとする十分なエビデンスもなかった。これら5件の比較試験の詳細な結果および数件進行中の試験の予備的結果が待たれる。

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背景: 

卵巣癌患者の多くで既存の化学療法剤に対する抵抗性を最終的には持つに至ることから、特異的な分子経路を標的とする新薬が開発されつつある。そのような種類の薬剤の1つが、腫瘍の発育に不可欠な血管新生(新しい血管の形成)を阻害するものである。既存の化学療法レジメンにこれらの新薬を追加することによって生存が改善するか否か、かつその副作用はどういうものか確認することは重要である。

目的: 

卵巣癌の治療における血管新生阻害薬の有効性および毒性を比較すること。

検索方法: 

Cochrane Gynaecological Cancer Review Group's Trial Register, Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)(コクラン・ライブラリ2010年、Issue 10)、MEDLINEおよびEMBASE (1990年~2010年10月)を検索し、終了したランダム化比較試験(RCT)の同定を試みた。臨床試験登録も検索し、追加情報については終了済みの試験、進行中の試験の著者らに連絡を取った。

選択基準: 

卵巣癌患者を対象に、標準的化学療法または無治療と血管新生阻害薬を比較しているランダム化比較試験

データ収集と分析: 

2名のレビューアが別々にデータ収集と抽出を行った。データの統合にはランダム効果モデルを用いた。

主な結果: 

全ての結果が発表され、すでに終了した、血管新生阻害薬に関するRCTで、本選択基準を満たすものはなかった。4つの異なる血管新生阻害薬の終了したRCTの抄録5件を同定し、その参加者の総計は3,701例となった。2件の試験のメタアナリシスでは、進行卵巣癌新規患者において、ベバシズマブ併用療法および維持療法と、化学療法(カルボプラチンとパクリタキセル)単独との間で全生存(OS)に統計学的有意を認めなかった。しかし、ベバシズマブ併用療法および維持療法を受けた患者では、疾患の進行するリスクが25%低下した[ハザード比(HR)0.75、95%信頼区間(CI)0.68~0.83、P<0.001]。また重度の消化管有害事象、中等度または重度の高血圧、および重度の出血のリスクが有意に上昇した。1件の試験では、化学療法を(ベバシズマブ維持療法ではない)併用療法と比較し、全生存(OS)および無進行生存(PFS)に統計学的有意を認めなかった。しかし、ベバシズマブ投与患者では中等度または重度の高血圧をきたすリスクが有意に高かった。再発性卵巣癌患者を対象にした、パクリタキセル単独、低用量ないし高容量のAMG 386併用の3群からなるRCTでは、全生存(OS)に統計学的有意を認めなかった。しかし、低用量AMG 386投与患者は、プラセボ投与患者に比べて疾患の進行するリスクが3分の1低かった(HR 0.57、95% CI 0.36~0.91、P = 0.02)。本試験では介入群で有害事象が増加したとのエビデンスは認めなかった。2件の比較的小規模なRCT(1件はVEGF-Trapによる、もう1件はBIBF 1120による)では、プラセボに比べて有意な生存利益をもたらす、あるいは重篤な有害事象が増加したとのエビデンスは認めなかったが、いずれにおいても統計学的検出力が不足していた。5件の試験はすべてバイアスのリスクが不明であったが、その主な理由は、これらが抄録しか発表しておらず方法論の詳細が不明であったからである。進行中の試験は12件同定した。

訳注: 

監  訳: 大神 英一,2011.12.15

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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