急性虚血性脳卒中に対する血管内血栓除去術と脳血管インターベンション

レビューの論点

本レビューでは、血管の閉塞が原因で発症する脳卒中において、血管内血栓除去術(機械装置を用いて血管内の血栓を除去する方法)、動脈内血栓溶解療法(血栓を溶解する薬剤を直接注入する方法)、またはその両方が標準的な治療のみを行った場合より優れた結果をもたらすかどうかを検討した。

背景

ほとんどの脳卒中は、脳にある太い血管が血栓によって閉塞することが原因である。このような脳卒中では、酸素の供給不足により脳組織が損傷を受ける。虚血性脳卒中とは、血流が制限されることにより、酸素の供給不足により周囲の組織が損傷して壊死に至る脳卒中である。このような患者の場合、最も直感的な治療方法は、血栓溶解剤を直接血栓に注射するか、機械的な装置を使って血栓を除去するか、あるいはその両方を行うことで、閉塞を取り除くことである。迅速な治療により、脳に大きな損傷が生じる前に血流が回復し、良好な回復につながる。しかし、これらの治療法は、脳内での出血を引き起こす可能性もあり、その結果、治療の結果が悪くなることもある。本レビューは、血管の閉塞による脳梗塞の治療法として、血管内機械的血栓除去術と動脈内血栓溶解療法が安全で有効な治療法であるかどうかを検証するために、ランダム化比較試験(無作為な方法で参加者を2つ以上の治療群のいずれかに割り付けた試験)を検索した。

検索日

2020年9月1日

研究の特性

急性虚血性脳卒中と確定診断された患者を対象に、血管内血栓除去術または動脈内血栓溶解療法、あるいはその両方に加えて通常の医学的治療を実施したものを、通常の医学的治療のみの実施と比較したランダム化比較試験を対象にした。

研究の資金源

資金の提供はなかった。

主な結果

合計3,793人の参加者を対象とした19件の試験を特定した。血管内血栓除去術による治療は、脳出血や死亡のリスクを高めることなく、機能が良好な状態で患者の生存を改善する可能性がある。どちらの治療が有効なのかを判断するのに、発症からの最適な時間や、後頭部(脳の後方部分に供給される)の血流で治療が有効かどうかは、まだ明らかとなっていない。また、血管内血栓除去術または動脈内血栓溶解療法、あるいはその両方を最初に実施する治療方法が、静脈内(静脈に薬剤を注入する)血栓溶解治療を最初に地域の医療センターで実施して、その後に機械的血栓除去術や動脈内血栓溶解術、あるいはその両方を実施できる病院に患者を転院させる治療方法よりも優れているかどうかを研究する必要がある。

エビデンスの確実性

本レビューの対象となった試験は、バイアスのリスクが低いか不明であると判断されたため、全体的にエビデンスの確実性は高い。

訳注: 

《実施組織》 冨成麻帆、 堺琴美 翻訳[2021.12.23]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007574.pub3》  

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