腰痛がある患者における椎間板ヘルニアに起因する腰髄神経根障害に対する理学的検査

著者の結論: 

単独で用いた場合、腰椎椎間板ヘルニアを同定するために用いられている多くの身体的検査の診断能が低いことを現在のエビデンスは示している。しかし、多くの知見は外科患者集団から生じたものであり、プライマリー・ケア患者集団や非選択的集団にあてはまらない可能性がある。検査を併用する場合、より高い診断能が得られる可能性がある。

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背景: 

脚部痛(坐骨神経痛)を伴う腰痛が、神経根圧迫を生じる椎間板脱出により引き起こされることがある。多くの患者で保存療法が奏効するが、外科的椎間板切除術はより迅速な症状の緩和をもたらす可能性がある。プライマリ・ケア医は、椎間板ヘルニアの可能性を評価し、更なる画像診断や場合によっては手術に患者を選択するため、患者病歴や身体的検査を用いる。

目的: 

(1)腰痛や坐骨神経痛がある患者において診察中に行われる検査(単独または併用)が椎間板ヘルニアによる神経根障害を同定する診断能を評価する。(2)異質性がある情報源が診断能に与える影響を評価する。

検索戦略: 

PubMed(MEDLINEを含む)、EMBASE、CINAHL、および、(システマティック)レビュー:PubMedおよびMedion(すべて最も初期から2008年4月30日まで)を主要な研究を同定するため電子データベースを検索し、検索した論文の参考文献をチェックした。

選択基準: 

腰痛患者に対して診察中に行われた検査の結果を、画像診断(MRI、CT、脊髄造影)の結果や手術時所見と比較した研究を考慮した。

データ収集と分析: 

2人のレビューアが、QUADASツールを用いて各々の発表の質を評価し、患者や研究デザイン特性、インデックス検査と参照基準、および、2×2診断表についての詳細を抽出した。身体的検査のすべての面に対する感度と特異度と95%信頼区間(95%CI)に関する情報を提示する。感度と特異度のプールした推定値を、十分な臨床的および統計的同質性を示している研究サブセットに対して計算した。

主な結果: 

16件のコホート研究(中央値N=126、範囲71~2,504)と3件の症例対照研究(38~100症例)を選択した。プライマリー・ケア患者集団を対象に実施されたのは1件の研究のみであった。単独で用いた場合、多くの身体的検査(脊柱側弯症、不全麻痺か筋力低下、筋肉消耗、反射障害、感覚欠損)の診断能は不良だった。一部の検査(前屈、過伸展テスト、スランプテスト)の診断能はわずかにより良好であったが、研究の数が少なかった。1件のプライマリー・ケア研究において、多くの検査は他の設定よりも高い感度と低い特異度を示した。多くの研究が下肢伸展挙上(Straight Leg Raising:SLR)テストを評価した。高い椎間板ヘルニア有病率(58%~98%)により特徴づけられる外科患者集団において、SLRは高い感度(プールした推定値0.92、95%CI:0.87~0.95)と広範囲にわたる特異度(0.10~1.00、プールした推定値0.28、95%CI:0.18~0.40)を示した。画像診断を用いた研究の結果は、より異質性を示し、感度がより低かった。交差SLRは高い感度(プールした推定値0.90、95%CI:0.85~0.94)を示し、特異度は一貫して低かった(プールした推定値0.28、95%CI:0.22~0.35)。陽性検査結果を併用することにより、身体的検査の感度は高まったが、検査併用に関するデータを提示した研究は少なかった。

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