メインコンテンツに移動

婦人科がんを患う女性のリンパ嚢胞形成予防のための、骨盤内リンパ節郭清後のドレーンありとドレーンなしとの比較

背景
本レビューは、2014年第6号に発表されたコクランレビューの更新版である。

骨盤内リンパ節郭清(骨盤内にあるリンパ節の除去)は、体内へのがんの拡がりを確認するための、婦人科がんの外科処置の重要な要素のひとつである。しかし、骨盤内リンパ節郭清は、特にリンパ嚢胞形成(骨盤内にリンパ液が貯留すること)などの合併症を引き起こすことがある。リンパ嚢胞は、下肢の腫脹(足のむくみ)、尿管(尿を腎臓から膀胱へと運ぶ管)の閉塞、骨盤痛、下肢静脈内や骨盤静脈内の血栓(血液の塊)の形成、腸管運動障害および感染を引き起こすことがある。有効性に関する明らかなエビデンスはないものの、そのような合併症を予防するために、腹膜と後腹壁(背中側の腹壁)の間の手術部位に溜まったリンパ液を除去する吸引ドレーン(チューブ)の設置が今まで推奨されてきた。

レビューの論点
本レビューの目的は、骨盤内リンパ節郭清後のリンパ嚢胞形成を予防するにあたって、ドレーンの効果をドレーンを設置しない場合と比較することにあった。

主な結果
2017年3月の主要データベース検索を更新したところ、4件の研究(571人の女性患者)がみつかった。患者は主に子宮頸がんと子宮内膜がんを患っていたが、1件の研究のみが卵巣がんを患う患者も対象としていた。吸引ドレーンの設置は、特に腹膜(骨盤内膜)を開放したままにした時にはリンパ嚢胞の予防に有効でないことが結果から実証された。むしろ、吸引ドレーンを設置すると、短期的および長期的なリンパ嚢胞形成およびそれに伴う症状のリスクが高まる。

エビデンスの質
本レビューは、最終解析で中等度から高い質のエビデンス(バイアスが不明または低リスク)の臨床試験4件を対象とした。

訳注

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外がん医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)串間貴絵 翻訳、加藤恭郎(天理よろづ相談所病院緩和ケア科)監訳 [2021.06.24] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD007387.pub4》

Citation
Charoenkwan K, Kietpeerakool C. Retroperitoneal drainage versus no drainage after pelvic lymphadenectomy for the prevention of lymphocyst formation in women with gynaecological malignancies. Cochrane Database of Systematic Reviews 2017, Issue 6. Art. No.: CD007387. DOI: 10.1002/14651858.CD007387.pub4.