糖尿病に対するシナモン

糖尿病は、慢性代謝疾患である。糖尿病の人は、心血管疾患(心臓発作、脳卒中、さらに、わずかな距離を歩いても重度の痛みが起こる急性および慢性の下肢虚血をはじめとする末梢血管疾患など)のリスクが大きくなることが知られている。このほか、眼の疾患、腎不全、神経損傷および性機能障害のリスクも、一般集団より大きくなる。血糖値の調節が改善されれば、このような合併症リスクの低下につながる可能性がある。

多くの動物研究で、シナモン(桂皮)が血糖値を改善することが示されているが、ヒトに対する効果はあまり明らかになっていない。このため、経口のシナモン抽出物が血糖をはじめとするアウトカムにもたらす効果を明らかにすることにした。糖尿病の577例が参加した10件のランダム化比較試験を同定した。参加者は、1日平均2gのシナモンを錠剤またはカプセルで、4~16週間にわたって摂取した。試験は、全般的にうまく実施されておらず、質の低いものであった。

シナモンが、血糖値や、グルコースコントロールの長期的な指標であるグリコヘモグロビンA1c(HbA1c)を下げる上で、プラセボや有効薬剤、無治療と比較して効果がないことが明らかになった。健康関連QOLや罹患率、全死因死亡率、費用について調べた試験はなかった。シナモン治療有害作用は一般に軽度で、頻度も高いものではなかった。

糖尿病にシナモンを用いた場合の長期的な利益とリスクを明らかにするために、今後も試験を実施する必要がある。 厳密なデザインで試験を実施すること、試験方法の質を報告すること、さらに、健康関連QOLや糖尿病の合併症などの重要なアウトカムを検討することに留意する必要がある。

著者の結論: 

1型または2型の糖尿病に対してシナモンの使用を支持するには、エビデンスが不十分である。今後、割り付けの隠蔽化および盲検化の問題に対処した試験を実施する必要がある。さらに、健康関連QOL、糖尿病合併症および費用など、ほかにも重要なエンドポイントを含めることが必要である。

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背景: 

糖尿病は、心血管疾患、網膜症、腎症、神経障害、性機能障害および歯周病のリスク上昇につながる慢性代謝疾患である。血糖コントロールの改善によって、このような合併症のリスクを下げることができる可能性がある。いくつかの動物研究が、シナモン(桂皮)が血糖コントロールの改善に効果がある可能性を示している。この効果に関しては、ヒトを対象にした研究でも検討されてきたが、その研究結果をシステマティックに評価したものはない。

目的: 

糖尿病患者に対するシナモンの有効性を評価すること。

検索方法: 

AARP Ageline、AMED、AMI、BioMed Central gateway、CAM on PubMed、CINAHL、Dissertations Abstracts International、EMBASE、Health Source Nursing/Academic edition、International Pharmaceutical Abstracts、MEDLINE、Natural medicines comprehensiveデータベース、コクラン・ライブラリおよびTRIPデータベースから、条件に適合するランダム化比較試験を同定した。ほかにも、臨床試験登録および採用した試験の参考文献リストを検索した(いずれも2012年1月まで)。さらに、含有物の専門家およびシナモン抽出物の製造業者に問い合わせた。

選択基準: 

1型または2型の糖尿病を対象に、経口のシナモン(Cinnamomum属植物)単一製剤の有効性をプラセボ、有効薬剤または無治療と比較したランダム化比較試験とした。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者が、独立して試験を選択し、バイアスのリスクおよび試験の質を評価し、データを抽出した。情報が欠損している場合は、試験著者に問い合わせた。

主な結果: 

1型および2型の糖尿病の参加者総計577例を登録した前向きランダム化並行群間比較試験10件を同定した。中等度のバイアスのリスクと判定した2件を除いて、全試験バイアスのリスクの評価は、高い、もしくは不明であった。試験の50%で、いくつかのドメインのバイアスのリスクが高かった。シナモンの経口単一製剤(主にシナニッケイ)が平均用量1日2g、4~16週間にわたって投与されていた。空腹時血糖値に対するシナモンの効果には決定的なものが見出せなかった。シナモン群と対照群の間で、グリコヘモグロビンA1c(HbA1c)、血清インスリンおよび食後グルコースに統計学的有意は認められなかった。データが不十分であったため、インスリン感受性の結果は統合できなかった。健康関連QOL、罹患率、死亡率および費用に関して報告した試験はなかった。経口シナモンに対する有害作用の頻度は低く、概して本質的に軽度であった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.1.2]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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