糖尿病性腎疾患に対するペントキシフィリン

著者の結論: 

既存のエビデンスから、ペントキシフィリンは、腎機能の改善やアルブミン尿および蛋白尿の減少において一定の効果をもたらすと思われ、DKD患者にとって明らかに重篤な有害作用はない。しかし、ほとんどの試験が報告内容に乏しく、小規模で、方法論的に不備があった。DKDに対するペントキシフィリンの使用を支持するエビデンスは、本患者集団における本剤の使用を推奨するには不十分であった。本剤の効果をさらに評価するために、DKDにおけるペントキシフィリンに関する、厳密にデザインされたランダム化、多施設共同、大規模試験が必要である。

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背景: 

糖尿病性腎疾患(DKD)は、罹病率や死亡率の増加を伴い、ほとんどの場合、心血管系合併症と関連する。近年、DKDの原因において炎症の関連性が検討されているが、炎症マーカーはDKD患者の方が一般集団に比べて高いことが明らかになっている。ペントキシフィリンはメチルキサンチン・ホスホジエステラーゼ阻害薬で、好ましい抗炎症作用と免疫調節性を持つ。ペントキシフィリンがもたらす抗炎症作用は、DKDの管理に有効となる可能性がある。

目的: 

DKD患者の治療におけるペントキシフィリンの利益と有害性を評価する。

検索方法: 

Cochrane Renal Group's specialised register(2012年1月)、CENTRAL(2011年第12号)、MEDLINE、EMBASE、中国の生物医学文献データベース4件(CBM-disc、1979~2009年7月)、Chinese Science and Technique Journals Database(VIP、2009年7月まで)、China National Knowledge Infrastructure(CNKI、2009年7月まで)、WanFang データベース(2009年7月まで)を検索した。

選択基準: 

DKDにおけるペントキシフィリンの利益と有害性を検討した全ランダム化比較試験(RCT)及び準RCT。

データ収集と分析: 

2名のレビューアが個別にデータを抽出した。メタアナリシスは、十分に類似した患者における同等のアウトカムに関するデータが複数の試験から得られた場合に行った。二値アウトカムの結果は、95%信頼区間(CI)のリスク比(RR)として表した。平均差(MD)は、そのアウトカムが連続的なスケールで表現される治療効果を評価する目的で計算し、標準化平均差(SMD)は、異なるスケールが使用される場合に計算した。データはランダム効果モデルを用いてプールした。有害作用は、説明的手法や、可能な場合は95%CIのリスク(RD)を用いて評価した。

主な結果: 

選択基準を満たしたDKD参加者計991例を組入れた試験を17件特定した。全体的には、対象試験の方法論の質は低く、ランダム化の方法を報告した試験は4/17件、報告しなかった試験は13/17件で、ランダム割り付けの方法を説明した試験はなかった。バイアスリスクが高いと見なされた試験は4/17件、アウトカムデータの報告が不完全であったためにリスクは不明と見なされた試験は13/17件、バイアスリスクが低い試験は9/17件、アウトカムの報告が選択的であったためにバイアスリスクが不明であった試験は8/17件であった。 プラセボに比べて、ペントキシフィリンは、血清クレアチニン(SCr)(MD -0.10 mg/dL、95% CI -0.17~-0.03)、アルブミン尿(SMD -2.28、95% CI -3.85~-0.70)、顕性蛋白尿(MD -428.58μg/分、95% CI -661.65~-195.50)を有意に減少させたが、クレアチニンクリアランス(CrCl)(MD -5.18 mL/分、95% CI -15.55~5.19)にはなかった。ルーチン治療のみの場合に比べて、ペントキシフィリンにより、SCr(MD 0.00 mg/dL、95% CI -0.06~0.07)や血圧[収縮期(SBP): MD -0.28 mm Hg、95% CI -2.20~1.63;拡張期(DBP):MD -0.15 mm Hg、95% CI -1.44~1.14]は有意に低下しなかったが、アルブミン尿(SMD 0.62、95% CI 0.18~1.07)と蛋白尿(MD 0.46 g/24時、95% CI 0.17~0.74)が有意に減少した。1型および2型DKD患者では、ペントキシフィリンと実対照薬(カプトリルまたはクロニジン/メチルドーパ)の間で、SCr(MD 0.00 mg/dL、95% CI -0.08~0.07)、アルブミン尿(MD -8.79μg/分、95% CI -27.18~9.59)、蛋白尿(MD -0.01 g/24時、95% CI -0.03~0.01)、血圧(SBP:MD 1.46 mm Hg、95% CI -0.57~3.50;DBP:MD 1.37 mm Hg、95% CI -0.23~2.98)に有意はなかった。CrClは、ペントキシフィリンをクロニジン/メチルドーパと比較した場合は有意に増加した(MD 10.90 mL/分、95% CI 1.40~20.40)が、カプトリルと比較した場合は増加しなかった(MD 3.26 mL/分、95% CI -1.05~7.59)。末期腎疾患(ESKD)罹患率、ESKD発症までの期間、QOL、総死亡率に関するデータは得られなかった。ペントキシフィリンの有害事象は軽度で、対象としたいずれの試験でも重篤な有害事象は報告されなかった。

訳注: 

監  訳: 相原 守夫,2012.6.19

実施組織: 厚生労働省委託事業によりMindsが実施した。

ご注意 : この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、Minds事務局までご連絡ください。Mindsでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、編集作業に伴うタイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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