活動性クローン病の治療のためのプロバイオティクス

本レビューの目的

本コクランレビューでは、クローン病の人に対して、プロバイオティクスによって寛解を導入できるかどうかを明らかにすることを目的とした。この目的を達成するために、2件の研究から得られたデータを解析した。

要点

プロバイオティクスは、プラセボ(偽薬)よりも寛解の導入に優れているかどうかは不明である。いずれの研究でも重篤な有害事象はなかった。

本レビューからわかったこと

クローン病は、腸に炎症を引き起こす疾患であり、口腔潰瘍、腹痛、下痢、腸の閉塞、瘻孔(腸と隣接する器官が管状の穴でつながること)、膿瘍、栄養不良、血中ヘモグロビン低値、倦怠感などの症状をきたすことがある。腸内細菌のバランスが悪いことがこの疾患の原因のひとつであることを示唆する科学的根拠(エビデンス)がいくつかある。このため、生きた微生物であるプロバイオティクスが腸内細菌を変化させて、炎症を抑えることができる可能性がある。

レビューの主な結果

プロバイオティクスとプラセボを比較したランダム化比較試験(参加者が2つ以上の治療群のひとつにランダムに割り付けられる臨床研究、randomised controlled trials:RCT)を検索した。参加者46例の情報が記載されているランダム化比較試験が2件あった。いずれの試験も成人対象としていた。クローン病に寛解導入する目的では、プロバイオティクスとプラセボとの間に差があるかどうかは明らかではない。プラセボと比較して、プロバイオティクスが(軽度および重篤な)有害事象に差をもたらすかどうかは明らかではない。

結論

本レビューでは、活動性クローン病の治療としてのプロバイオティクスを検討し、有益性がないことを示した研究2件を同定した。いずれもきわめて小規模な研究であったため、現時点では明確な結論を出すことができない。プロバイオティクスは一般に忍容性が良好であった。プロバイオティクスにより治療中止に至った副作用が1つだけあったが、その詳細は記載されていなかった。上述の研究に示されたエビデンスでは、プロバイオティクスの効果に関して結論を出すことはできない。より多くの参加者を対象にした、優れたデザインの研究が必要である。

本レビューの更新状況

本レビューは、 2020 年7月6日現在のものである。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2020.12.28] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD006634.pub3》

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